2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720311
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
高田 宗平 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (80597188)
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Keywords | 漢籍 / 漢学 / 『論語義疏』 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き(1)鎌倉時代の禁裏・仙洞御所周辺の漢籍受容・漢学講究、(2)鎌倉時代の仏家に於ける漢籍の受容の研究の2点に加えて、新たに(3)院政期の藤原頼長の漢籍受容・漢学講究、並びに(4)中世の『論語義疏』受容についても研究を行った。 (1)鎌倉時代の禁裏・仙洞御所周辺の漢籍受容・漢学講究については、次の通りである。①昨年度から継続して、花園天皇(後、上皇)が講究・談義した漢籍、講究・談義に際し交流した人物、漢籍講究の方法、等を検討するため、『花園天皇宸記』を読み進め、以上に関する事項を抽出し、データ化を図った。②国立歴史民俗博物館所蔵の廣橋家旧蔵記録文書典籍類に含まれている年号勘文資料を実見調査し、書誌事項を蒐集し、一部の年号勘文資料については翻字し、検討を加えた。 (2)鎌倉時代の仏家に於ける漢籍の受容については、昨年度実見調査を実施し、蒐集した天野山金剛寺所蔵の漢籍及び準漢籍類の書誌事項等の基礎データを用いて検討し、一部は書誌学的検討と歴史的な位置付けを行った。 (3)院政期の藤原頼長の漢籍受容・漢学講究については、頼長の日記『台記』を読み進め、頼長が、講究・談義した漢籍、講究・談義に際し交流した人物、漢籍講究の方法に関する事項を抽出し、データ化を図っている。 (4)中世の『論語義疏』受容については、中世に撰述された典籍から、『論語義疏』の引用文を捜索し、引用文を見出すことができたものは、中世の典籍の原本調査を実施し、中世の典籍所引『論語義疏』と旧鈔本『論語義疏』との異同を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①昨年度より行ってきた『花園天皇宸記』から漢籍の講究・談義に関する事項を抽出し、データ化を図る作業が終了した。②歴博所蔵の廣橋家旧蔵記録文書典籍類の年号勘文資料のうち数点は書誌事項を蒐集し、1点は翻印を公表した。また、③天野山金剛寺所蔵漢籍・準漢籍類の一部については、検討を行い、公表する準備が調いつつある。更に、今年度より、④『台記』に見える漢籍講究と⑤中世の『論語義疏』受容を着手した。 ②の成果の一部を公表したこと、26年度中刊行予定の著書に①④⑤の成果の一部を活かしたこと、③の成果の一部を公表する準備が調いつつあること、から、本年度はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度より、調査・蒐集してきているデータ・資料を活用し、研究論文や研究ノート等の方法で研究成果の発表を行っていく。25年度から実施した『台記』より漢籍の講究・談義に関する事項を抽出し、データ化の完成を目指す。歴博所蔵廣橋家旧蔵記録文書典籍類と京都大学総合博物館所蔵勧修寺家文書の両文書類に含まれる年号勘文資料の調査、歴博所蔵漢籍の調査、中世に於ける『論語義疏』受容の検討の各々も引き続き実施していく。『宝蔵御物御不審櫃目録』等を用い、鎌倉時代後期から南北朝時代の禁裏・仙洞御所周辺の漢籍受容の諸相の一斑を検討していく。
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