2012 Fiscal Year Research-status Report
近世後期日朝間における情報流通の研究―対馬藩宗家史料を素材として―
Project/Area Number |
24720314
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
守友 隆 北九州市立自然史・歴史博物館, その他部局等, 研究員 (60610847)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 韓国 |
Research Abstract |
本研究の初年である今年は国内外に点在している対馬藩宗家文書のうち、幕末情報関係のものの所在調査を行った。2012年5月上旬に韓国国史編纂委員会、10月中旬に長崎県立対馬歴史民俗資料館にて史料調査を行った。 各所蔵機関においては文書目録を作成・公開しているが、内容まで詳細に採録しておらず、目録から見出すことは難しい。また目録にある史料の表題は「書状」・「覚」などと内容が推測できないもののなかに幕末情報関係のものが多くあり、史料を1点1点調査し、幕末情報関係のものの目星を付けた。 韓国国史編纂委員会は、朝鮮の歴史を研究する為に設置された大韓民国の国家機関である。戦前、日本の占領下にあった朝鮮史編修会の資料を引き継ぐ形で戦後に設置された。朝鮮史編纂当時、朝鮮総督府および朝鮮史編修会が旧対馬藩主の宗家から購入した近世日朝関係史に関連する史料数万点(「対馬宗家文書」)が韓国側に接収され、現在もソウルの韓国国史編纂委員会が所蔵している。同所の調査ではこの「対馬宗家文書」の、とりわけ江戸時代後期のアヘン戦争、アロー戦争(第二次アヘン戦争とも呼ばれる)などの海外事件情報が朝鮮王朝―対馬藩(倭館)―江戸幕府の経路で、朝鮮から日本に流入したことがわかる文書を中心に調査した。その結果、「北京筋兵乱之風聞之趣」、「唐兵乱之儀」などと記され、アヘン戦争に関する情報が朝鮮王朝の通訳から対馬藩の通訳に伝えられ、日本に流入したことがわかる史料を発見した。 幕末情報関係のものの多くは「御内用」・「御内用答」という表題の書状に多くあることが明らかになった。そしてその多くは長崎県立対馬歴史民俗資料館、韓国国史編纂委員会に所蔵されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した研究方法、対馬藩から幕府に届け出たことを対馬藩がまとめた「公儀被仰上」、対馬藩の出先機関である和館の館主日記である「毎日記」をまず調査・解読したが、膨大な史料群のなかから幕末情報関係を見出すことは困難であった。そこで、研究方法を変更し、幕末情報関係の史料群の当たりを付けて、その史料群を集中的に調査・解読していく方法に変更した。そのため目録等で調査史料を絞った上で、調査を行い、「御内用」・「御内用答」という表題の文書群に幕末情報関係史料が多くあることがわかった。しかし、当初の研究方法を変更したため、達成度はやや遅れている状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を踏まえ、対馬藩宗家文書のうち「御内用」、「御内用答」の悉皆調査・解読を行う。この二種類の文書だけで本研究が完結するとは考えないが、本研究の中核をなす史料であるので、十分に労力を傾ける。 また、「毎日記」、「公儀被仰上」について、上記の成果を踏まえ、その史料と同時期のものを中心に調査を進める。特に「毎日記」は対馬藩宗家文書の根本史料で江戸時代前期から明治初年までの期間、対馬藩の職制のなかで各部署で作成されたもので、数千点に及ぶ膨大な史料であるが、「御内用」・「御内用答」の解読を先行して行うことで、効率的に研究を進めることができると考える。 さらに、先行研究ならびに現在進行形の他者の研究について文献の読み込みや学会での情報収集で理解を深め、常に研究目的と方法論が合理的なものかを確認しながら上記の研究を進める。そうしたことによって、初年度の研究達成度「やや遅れている」を取り戻せると考える。 くわえて、本年9月に学会で本研究前半期の研究成果を報告する予定である。学会報告を一つの区切りとして前半期の研究成果をまとめ、また報告した上での反応・批評を真摯に受け止め、後半期の研究の方向性を確定させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に購入予定であった高額物品購入に充てたい。具躰的に挙げると、ノートパソコン30万円、デジタルカメラ10万円、『日本国語大辞典』全14巻22万500円である。次に、史料調査の旅費である。韓国国史編纂委員会で5日間前後、東京の東京大学史料編纂所・慶應義塾大学図書館で5日間前後、長崎県立対馬歴史民俗資料館で5日間前後の3回、40万円前後の使用を予定している。
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