2013 Fiscal Year Research-status Report
近世後期日朝間における情報流通の研究―対馬藩宗家史料を素材として―
Project/Area Number |
24720314
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
守友 隆 北九州市立自然史・歴史博物館, その他部局等, 研究員 (60610847)
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Keywords | 日韓交流 / 大韓民国 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本年度の研究では、「太平天国の乱」という反清朝の革命運動に関する情報流通に注目して研究を行った。言うまでもなく、江戸時代を通し、日本(対馬)と李氏朝鮮との情報流通は常態的にあっただろうが、東アジアに大きな変化をもたらす事件が頻発し、情報流通が活発化する幕末期、特に清で起こった「太平天国の乱」の事件情報に焦点を絞り、対馬藩(朝鮮半島の倭館・対馬藩庁・対馬藩江戸藩邸)が海外事件情報をどのようにして入手し、それをどのように用いたかの解明を試みた。 具体的には、清国内→李氏朝鮮の役人→倭館(朝鮮半島)→対馬藩庁→対馬藩江戸藩邸→江戸幕府というルートでどのように伝達されていったかを長崎県立対馬歴史民俗資料館所蔵「宗家文庫」、大韓民国国史編纂委員会所蔵「対馬宗家文書」などを用いて分析を行った。 対馬藩の出先機関、朝鮮半島の倭館では対馬藩の役人が「太平天国の乱」情報の収集活動を積極的に行っていたことが明らかになった。その一方で、李氏朝鮮政府は「太平天国の乱」情報が倭館(対馬藩ひいては≪日本≫)に伝わる(漏えい)することを警戒していた。それは清と李氏朝鮮との関係性のためであった。 以上については、平成25年9月28日、福岡大学で開催された第15回七隈史学会大会日本史部会で口頭報告を行った。現在、論文化中である。本年度の研究の延長として、次年度前半は、幕末期の慶応2年(1866)、李氏朝鮮とフランスとの戦い「丙寅洋擾」(へいいんようじょう)に焦点を絞り、研究を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度、膨大な対馬宗家文書史料を分析する上での研究方法を確立することに手間取り、研究が遅れていた。本年度は幕末期の事件情報を記した史料群に当たりをつけて調査・研究を行い、研究の方法論をある程度確立し、前年度の研究の遅れを取り戻すことはできた。ただ、全体的に見て、当初の計画からはやや遅れていると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度の成果をできるだけ早い段階で論文化し、学会誌に発表する。具体的には本年度前半の成果を口頭発表した『七隈史学』を予定している。 つぎに、論文化と並行して、幕末期の慶応2年(1866)、李氏朝鮮とフランスとの戦い、「丙寅洋擾」に関する情報流通について史料を調査・分析し、早い段階で学会報告、論文化を行う。 さらに、これまで調査してきた史料を翻刻したものを史料集としてまとめ、刊行する。私が在学していた九州大学大学院の『地域資料叢書』のシリーズからの刊行を予定している。出版社からの刊行のため、発信力が高く、成果の一端を広く知ってもらい、さらなる研究の発展につながると考えている。 平成26年度は本研究の最終年度であるため、3年間の研究成果をまとめた報告書の刊行を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定であった『日本国語大辞典』全14巻22万500円等の予算執行ができなかったため。 前年度予算執行予定だったものを速やかに執行する。
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