2013 Fiscal Year Research-status Report
イスラーム政治思想における「正統カリフ」概念の発展とスンナ派の形成
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24720319
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
橋爪 烈 千葉科学大学, 薬学部, 講師 (10613862)
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Keywords | 写本研究 / カリフ論 / イマーム論 / イスタンブル / イブン・ハルドゥーン / リエージュ / ロンドン / 国際情報交換 |
Research Abstract |
25年度の研究活動は、前年に引き続きカリフ論を収録するアラビア語著作の収集、またそれと関連したハディース集の収集を行った。このため8月末から9月初頭にかけて、ロンドンの英国図書館およびイスタンブルのスレイマニイェ図書館ならびにヴェヤジット図書館にして資料調査を行った。前年度の調査において複写ができなかった史料『教友の美徳の書』について、今回の調査では複写が許可されたので、その複写を行った。 またこの調査出張に先立ち、6月29日、東京大学スルタン・カブース・グローバル中東研究寄付講座主催の研究会において、「スンナ派政治思想における『正統カリフ』概念の意義」と題した研究発表を行い、前年度の成果の一部を提出した。この発表については、論文化を行い、同講座発行の雑誌に掲載されることが決まっている。 この他、25年度の研究活動としては、報告者が運営責任者となっているイスラーム初期史研究会のメンバーと共同で、イスラーム初期における信仰者(ムスリム)の活動、および彼らの指導権に関する問題などについての入門書であるFred Donner著Muhammad and the Believersの翻訳を行い、6月末に慶応義塾大学出版会から刊行予定である。 また2013年10月11-12日にかけて、ベルギーのリエージュ大学で開催された国際ワークショップInternational Conference Autograph/Holograph and Authorial Manuscripts in Arabic ScriptにおいてTextual criticism on the manuscripts of Ibn Khaldun’s autobiographyと題する発表を行い、報告者の写本を用いた研究方法についての一端を開陳した。この内容も論文化し、Brill社から出版される論集に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度、複写がかなわなかった史料の複写が許可され、史料調査も順調に進んでいること、また初年度から本年度前半までの成果を研究会で発表し、その後の調査を加えて論文化ができていること、国際会議での発表とその後の論文化という当初の予定にはなかった作業も進み、研究成果の公開の面ではかなりの進展があったことから順調と判断した。一方、史料読解については目覚ましい進展はなく、淡々と進めるのみであった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、本年度もテクストの読解作業を行いつつ、成果をまとめる、ないし公開に向けた準備を行う。計画ではアッバース朝カリフ自身の考える「カリフ論」を明らかにする作業を行うことになっているので、特定のテキストを選び出し、分析を行う予定である。また並行して、史料調査を行うので、26年度も海外史料調査を予定している。26年度はオックスフォード大学ボードリアン図書館とイスタンブルのスレイマニイェ図書館にて調査を行う予定である。 最終的な成果の公開については、26年度末から次年度にかけて、適当な国際学会を選ぶか、直接論文化するなどして行う予定であるが、26年度の研究の進展状況をみて判断する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は研究費を全て使用せず、次年度に繰り越した。24年度からの繰越金175,197円を加えて、二回の海外渡航を行う予定であったこととヨーロッパへの渡航であったため、旅費分として余裕をもたせた形にした。物品費の方で考えていた写本の複写費用がかからなかったこともあり、若干の余りが生じた。 26年度は物品費、旅費共に少なくなっているが、26年度も調査旅行を計画しているため、25年度からの繰越金はその旅費に充てる予定である。複写費用や書籍代はほぼかからないと思われるので、物品費からも旅費に充てて、調査期間を十分にとることで予算を使用する予定である。また英文校閲代に使用する予定でもある。
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