2013 Fiscal Year Research-status Report
19世紀後半ロシア帝国統治下ムスリム社会の家族社会史的研究
Project/Area Number |
24720327
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
磯貝 真澄 京都外国語大学, 国際言語平和研究所, 嘱託研究員 (90582502)
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Keywords | 中央ユーラシア史 / ロシア帝国 / ムスリム / イスラーム法 / ロシア法 / 家族社会史 / 国際研究者交流 / ロシア |
Research Abstract |
報告者は、研究実施計画の研究課題(1)「19世紀後半~1905年に、ロシア帝国の司法・行政下にあったヴォルガ・ウラル地域におけるムスリムの家族生活状況を、遺産分割関係文書史料の分析を鍵として解明する」について、成果を学術論文にまとめ、公表した。 まず、前年度までに行った学会報告等の結果、議論の不足が判明した論点等を補強するための研究資史料を収集し、読解分析した。それと同時に研究会報告を行い、関連諸分野の専門家から、さらなる助言も得た。その後、学術論文「ヴォルガ・ウラル地域におけるムスリムの遺産分割―その制度と事例」をまとめ、堀川徹他(編)『シャリーアとロシア帝国―近代中央ユーラシアの法と社会』(臨川書店、2014年3月)で発表した(「研究発表」欄参照)。 研究課題(1)については、資史料の読解分析を進めた結果、上記の学術論文には論理と紙幅のうえで収めることができない、さらなる新しい知見を得た。それは、遺産分割関係文書史料を、より法社会史・家族社会史的な視点から分析することで得られるものである。報告者は次年度、これを別個の研究成果としてまとめ、公表することをめざす。 報告者は今年度、研究計画では、研究課題(2)「19世紀後半~1905年のロシア帝国ヴォルガ・ウラル地域におけるムスリム家族とマハッラ(宗教・行政上の教区共同体)の実態を、ムスリムの教区簿冊を史料として家族社会史的・歴史人口学的手法により解明する」に、本格的に着手する予定だった。しかし、この研究課題解明のための最初の作業である、ロシア連邦ウファ市での文書館史料収集ができなかった。このため、研究課題(2)については、手もとに収集済みの関連資史料の読解分析を進めるにとどまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ロシア連邦ウファ市所在の諸文書館・図書館における研究資史料の所在調査と収集が実施できなかったため、研究資史料のうち、ムスリム遺産分割関係文書史料の量的収集と、ムスリム教区簿冊史料の収集が遅れている。ただ、前者の遺産分割関係文書史料については、収集済みのものを質的に分析することで、今年度学術論文を作成・発表することができた。次年度、既発表の学術論文に収めることができなかった新たな知見を、同種史料の量的収集で補強し、別個の研究成果としてまとめることをめざす。 後者の教区簿冊史料については、収集済みの関連資史料の読解分析を進めている。次年度にロシアで資史料収集をすれば、すぐに読解分析作業にも着手できる状態を整えている。このため、研究計画全体の大幅な遅延にはいたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度、報告者は、当初の研究実施計画の研究課題(1)の成果から新たに得られた知見をもとに、研究課題(1)-2「19世紀後半~1905年のロシア帝国ヴォルガ・ウラル地域における、帝国のムスリム行政とムスリムの家族・社会生活、およびイスラーム法実践の実態を、遺産分割関係文書を法社会史・家族社会史的視点から分析することで解明する」を設定し、遂行する。これは研究課題(1)の延長継続である。そして、研究課題(2)については、当初の研究実施計画の手順通りに進める。 いずれの研究課題も、ロシア連邦ウファ市所在の諸文書館・図書館における研究資史料の所在調査と収集を要するため、次年度こそはこれを実施する。また、サンクトペテルブルグ市所在の諸文書館・図書館に有用な資史料が所蔵されているとの情報を得たため、ウファと同時にペテルブルグにおける資史料の所在調査も行う。国内でも引き続き、特にロシア法、イスラーム法関係の資史料の収集を進める。 研究課題(1)-2について報告者は、既に学会で口頭報告を行う準備を進めている。この学会発表で、再検討や補強が必要な部分が判明することが想定され、さらに資史料の収集と読解分析を進める計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、ロシア連邦ウファ市の諸文書館・図書館における研究資史料の所在調査と収集を、今年度実施できなかったためである。この代替作業にできずとも、これを若干補うことのできる作業として、今年度はウファ市所在のロシア科学アカデミー・ウファ学術センター歴史言語文学研究所のR.ブルガーコフ上級研究員と密に連絡を取り、研究資史料の入手を可能な限り行ったが、資史料収集作業としては十分なものにならなかった。この結果、旅費相当分は次年度に送ることとなった。 当初の研究実施計画で、今年度、次年度のいずれにおいても、ロシア連邦ウファ市の諸文書館・図書館で研究資史料の所在調査と収集作業を行う予定であった。このため、次年度は、今年度実施することができなかった作業と、次年度実施する計画である作業をともに当該地で行う予定である。これは、当該地での滞在作業期間を当初計画より延長するか、または当該地に複数回赴くことで行なう。 また、研究実施の過程で、サンクトペテルブルグ市の諸文書館・図書館にも、次年度の研究実施計画に有用な研究資史料が所蔵されることが判明している。このため、サンクトペテルブルグ市にも滞在し、資史料の所在調査と収集を行う。 つまり、次年度使用額は、上記のようなロシア連邦各都市における資史料の所在調査と収集のため、当初の計画通り旅費として使用する予定である。
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