2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720330
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中田 美絵 関西大学, 東西学術研究所, 研究員 (00582842)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ユーラシア / 仏教 / 唐代 |
Research Abstract |
初年度となる平成24年度は、本研究の基礎作業として、唐代の長安・洛陽等で活動した仏教僧侶やその支援者・関係者に関わる資料の収集と整理を中心に行った。編纂史料にくわえ、墓誌・経幢などの石刻史料や、敦煌文書などを網羅的に調査することを目指した。 8月末~9月上旬に、中国西安(陝西省歴史博物館、西安博物院)、洛陽(龍門石窟、洛陽博物館)、泰安(泰安博物館、泰山)で、墓誌、造像記、経幢(主に仏頂尊勝陀羅尼経幢)、磨崖石刻などの石刻史料および遺跡の調査を行った。今後は、調査した諸資料から仏教関連の人物のリストアップを行い、出身地、肩書き、人脈、政治権力との関係、信仰の特徴など、諸情報を整理していく予定である。 上記の中国調査では、唐朝で儒・道・仏それぞれが担った役割の共通性や相違性、唐における仏教を含む外来宗教の受容とユーラシア情勢との関連性などを探るために、仏教以外(儒教・道教・景教)の史料・遺跡調査もあわせて行った。 また、唐滅亡後の中国仏教の展開を探るための作業をすすめた。今年度はとくに遊牧民の沙陀が建てた五代・後唐王朝に注目し、沙陀政権と仏教にかかわる資料の収集・整理を行った。 本研究の成果の一部として、7月に北京・首都師範大学で開催された「中古中国的信仰與社会学術研討会」(主催:首都師範大学歴史学院・北京大学中国古代史研究中心・『唐研究』編輯部)と、2月に京都で開催された日本史研究会例会(「古代における国際秩序形成と仏教」)において、それぞれ「従辺土到中心」・「8世紀における唐朝と仏教」というタイトルで学術報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究の目的」に記したとおり、唐代仏教と密接に関わる西安や洛陽で墓誌をはじめとする石刻史料の調査を行った。ただし、今年度は、泰安(山東省)での調査を新たにくわえ、西安・洛陽の調査時間を短縮したため、未調査のものも残った。これらは次年度に再調査する予定である。また、敦煌出土の仏教関連文書に関しては、所蔵先での調査は行わなかった。これは、予定していたイギリス大英図書館とフランス国立図書館等での調査をスムーズに進めるため、先行研究の収集や既に発表されている録文や図版等を用いて事前に整理を進めておく必要があったためである。録文や図版での作業は順調に進んでいるので、次年度以降、所蔵先で調査をする予定である。以上より、若干の変更はあったものの、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き西安・洛陽・太原で、博物館や研究機関に所蔵されている石刻史料や、仏教関連の遺跡調査を行う。 今年度の現地調査の結果、唐仏教の形成という観点から、唐以前の仏教との連続性についても着目する必要があることが分かった。よって、唐以前、とくに北朝期の先行研究や資料の収集も行う。 今年度、『大唐西市博物館藏墓誌』が中国で出版され、西市博物館に所蔵されている墓誌の全貌が明らかとなった。本研究にかかわるものが多く含まれていることが予想されるので、次年度中に入手し、関連する墓誌のリストアップと情報の整理を行う予定である。 敦煌文書中に残されている唐~五代の仏教関連文書(仏典や五臺山の讃文や巡礼記など)の調査を、イギリス大英図書館やフランス国立図書館で実施する。とくに、五臺山関連文書は、唐滅亡後の五臺山信仰の実態を探るうえで重要である。文字の異同を確認するほか、作成背景や当時の人々の利用法を探るため文書の状態(裏面の記事との関連など)も調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度中に本研究に関わる石刻史料関連の書籍等が中国で何点か出版されたので、これらを入手する。次年度もこうした書籍が出版されることが予想されるので、これらの入手にも研究費を使用する予定である。 データの迅速かつ網羅的な捜索・収集のために、CD-ROM版の編纂史料や石刻史料を購入する。 海外での調査として、中国(西安、洛陽、太原など)の博物館や研究機関、寺院や遺跡などで、唐代の宗教関連の石刻史料を中心とする文物調査を行う。もしくは、イギリス大英図書館やフランス国立図書館で、仏教関連文書(仏典や五臺山関連の文書など)の調査を行う予定である。 「現在までの達成度」で記したように、平成24年度は、国内での事前調査を優先し、予定していた海外調査の一部を次年度以降に見送ったため、繰越金が生じた。繰越金については、次年度以降の海外調査や石刻史料関連の書籍購入のために使用する予定である。
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Research Products
(4 results)