2012 Fiscal Year Research-status Report
ユーラシア東部における遊牧軍制の系譜-唐代「府兵制」を中心とした比較研究-
Project/Area Number |
24720332
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
平田 陽一郎 沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (50353280)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 遊牧軍制 / 府兵制 / ユーラシア東部 |
Research Abstract |
本研究は、ユーラシア東部で興亡した諸国家の軍制を相互に比較検討することを通じて、(1)その中で遊牧民族的特徴を備えた「遊牧軍制」の系譜が脈々と受け継がれていた実態、(2)北朝隋唐期の「府兵制」もこの系譜の上に位置づけられるという新たな事実、の2点を解明し、これによって、従来の「中国史」「東アジア史」といった小さな枠組みを超越したところで、(3)新たな軍制研究、およびそこからさらに一歩を進めて、軍事力を背景とした「隋唐世界帝国」の統治機構・支配構造を明らかにすることを目的とする。 上記の研究目的に沿って、実施初年にあたる今年度においては、(1)軍制関係研究論文の収集と学説整理、および(2)関連する墓誌史料の解読・分析、の2つの作業を実施してきた。 (1)軍制関係研究論文の収集と学説整理については、月に1~2度の頻度で上京して大学図書館等に出向き、約300編の軍制関係研究論文を複写・収集した。収集した論文は、時代ごと、テーマごとに分類しつつ通読していき、それぞれの研究動向を粗々とではあるが把握することができた。そもそも軍制史研究が他の分野に比して相対的に手薄だと考えられる中で、通時代的に軍制関係の論文を集めて同じ俎上に載せる作業は他にあまり例が無く、新たな試みとして相応の意義を持つものであると考えている。 もう一つの課題である(2)関連する墓誌史料の解読・分析については、墓誌等を精査して軍制研究に関わる史料を抽出・一覧化する基礎研究を継続的に実施している。またその中で見いだした特に重要な墓誌1点を取り上げ、文献資料と対比しつつ詳細な訳注を施し、後述のとおり、雑誌論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「研究実績の概要」欄において述べたとおりであるが、初年度に実施した軍制関係研究論文の収集と学説整理、および関連する墓誌史料の解読・分析は、次年度以降の研究推進に欠かすことの出来ない重要な基礎研究である。これは大変な時間を要する地道な作業であるが、事前に多少の計画の後れにも対応できるように、初年度1年間という十分な時間を確保しておいたため、当初に計画しておいた程度の作業は実施できている。ただし、作業を通じて新たに気づいた論文・史料を未だすべては参照し切れていないため、「(2)おおむね順調に進展している。」と自己評価しておくこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度には、唐代の「府兵制」を「遊牧軍制」として捉え直す研究を遂行する計画であり、初年度の参考文献と史料の収集・整理の成果を踏まえ、このテーマで1編の論文を執筆する。 当該時期の軍制は、鮮卑的伝統を濃厚に受け継いだ「遊牧軍制」として捉え直されなければならないことを、筆者は既発表の論文においてすでに指摘しているが、今年度の調査によって、他の時代・地域の「遊牧軍制」の実態について理解を深め、証拠となる史料も新たに収集することが出来たので、その成果をもとに制度・実態の具体的な様相を解明していく予定である。 なお、文献・史料の不足分については、24年度と同様の方法で、適宜、追加収集する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文献・史料の不足分について、24年度と同様の方法で、適宜、追加収集する予定である。したがって、具体的に必要となる研究費は、書籍の購入費、史料調査・複写収集作業のための旅費、そして消耗品費であるが、おおむね計上していたとおりの金額を使用する計画である。
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