2013 Fiscal Year Research-status Report
ユーラシア東部における遊牧軍制の系譜-唐代「府兵制」を中心とした比較研究-
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24720332
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
平田 陽一郎 沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (50353280)
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Keywords | 遊牧軍制 / 府兵制 / ユーラシア東部 |
Research Abstract |
本研究は、ユーラシア東部で興亡した諸国家の軍制を相互に比較検討することを通じて、(1)その中で遊牧民族的特徴を備えた「遊牧軍制」の系譜が脈々と受け継がれていた実態、(2)北朝隋唐期の「府兵制」もこの系譜の上に位置づけられるという新たな事実、の2点を解明し、これによって、従来の「中国史」「東アジア史」といった小さな枠組みを超越したところで、(3)新たな軍制研究、およびそこからさらに一歩を進めて、軍事力を背景とした「隋唐世界帝国」の統治機構・支配構造を明らかにすることを目的とする。 上記の研究目的に沿って、実施初年度において実施した(1)軍制関係研究論文の収集と学説整理、および(2)関連する墓誌史料の解読・分析の2つの作業を踏まえ、第二年度にあたる今年度は、唐代「府兵制」を「遊牧軍制」として捉え直す研究を遂行した。まずは、前史にあたる隋代に着目し、史上有名な暴君たる隋の煬帝に仕えた「給使」と呼ばれる部下達について詳しく検討し、これが北魏の内官や後のモンゴル・元朝におけるケシクにも通ずる性格を持つ、親衛兵中の親衛兵と言うべき存在であることを明らかにした。その上で、この給使に見られたような特性は、唐の中央軍たる「禁軍」の中にも脈々と受け継がれていた事実を解明することで、「府兵制」を含む唐代軍制像が遊牧軍制として捉え直されるべきことを指摘した。以上の論点について、後述するように二度の学会発表と二編の論文執筆を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「研究実績の概要」欄において述べたとおりであり、第二年度にあたる今年度においては、唐代「府兵制」を「遊牧軍制」として捉え直す研究を遂行した。当該問題の全面的な解明にはなお多くの検討を要するものの、二度の学会発表と二編の論文執筆を通じて、研究成果を発表することが出来たので、「(2)おおむね順調に進展している」と自己評価しておくこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる第三年度には、「府兵制」を中核とする唐の帝国構造を解明する研究を遂行する計画であり、初年度の参考文献と史料の収集・整理、二年度の唐代の「府兵制」を「遊牧軍制」として捉え直す研究の成果を踏まえ、このテーマで一編の論文を執筆する。 当該時期の軍制は、鮮卑的伝統を濃厚に受け継いだ「遊牧軍制」として捉え直されなければならないことを、筆者は既発表の論文においてすでに指摘しているが、そこから更に一歩敷衍して、隋唐世界帝国の形成とその構造について、新たな見解を提示することを目指す。なお、文献・史料の不足分については、初年度・第二年度と同様の方法で、適宜、追加収集する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行上必要な書籍の購入に当たって、配架スペースの確保・書籍の入手のし易さ・書籍の価格などを勘案した結果、若干の金額を次年度の使用に回すことにした方が良いと判断されたため。 研究最終年度に当たるので、次年度使用額も含めた助成金全額を、書籍の購入費、史料調査・複写収集作業のための旅費、そして消耗品費として、おおむね想定していた金額で早期に執行する計画である。
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