2014 Fiscal Year Annual Research Report
ユーラシア東部における遊牧軍制の系譜-唐代「府兵制」を中心とした比較研究-
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24720332
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
平田 陽一郎 沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (50353280)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 府兵制 / 遊牧軍制 / ユーラシア東部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユーラシア東部で興亡した諸国家の軍制を相互に比較検討することを通じて、(1)その中で遊牧民族的特徴を備えた「遊牧軍制」の系譜が脈々と受け継がれていた実態、(2)北朝隋唐期の「府兵制」もこの系譜の上に位置づけられるという新たな事実、の2点を解明し、これによって、従来の「中国史」「東アジア史」といった小さな枠組みを超越したところで、(3)新たな軍制研究、およびそこからさらに一歩を進めて、軍事力を背景とした「隋唐世界帝国」の統治機構・支配構造を明らかにすることを目的として、3年間にわたって研究を遂行してきた。 研究最終年度に当たる平成26年度には、前2年度の成果を踏まえて、いっそうの展開をはかるべく、まずは〔学会発表〕「皇帝と奴官―唐代皇帝親衛兵組織における人的結合の一側面―」を行い、質疑応答を経て得た新たな知見を盛り込みつつ、これを同タイトルの論文にまとめて発表し、「府兵制」を中核とする唐の帝国構造が、これまで注目されてきた律令に基づく「南衙」の官制機構に加えて、皇帝親衛兵の駐屯する「北衙」を中心とした、皇帝と家臣との人的結合が物を言う家政的支配空間との、いわば南北の二元的な構造になっていたことを解明した。さらにこれと良く似た構造を持つと考えられる遼(契丹)の国制との比較を、〔学会発表〕「唐代府兵制を中心とした遊牧軍制の比較研究序説」において行ない、今後引き続き行うべき研究への展望を示しておいた。以上の如く、本研究申請時に掲げた目的は、研究期間内に若干の修正を加えながらも完遂することができた。本研究を通じて新たに解明された事実は、これまでの通説・定説に修正を迫る内容を有し、今後の当該分野における歴史研究の展開に資するところが少なくないものと思われる。
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