2012 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アイルランド総合大学新設による社会とナショナリズムの変容
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24720337
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
崎山 直樹 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 特別研究員 (10513088)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 西欧近現代史 / 高等教育政策史 / アイルランド研究 / 大学史 / ナショナリズム研究 / 国際研究者交流(アイルランド) / 国際情報交換(アイルランド) |
Research Abstract |
本研究は、19世紀後半期に連合王国主導で整備されるアイルランドの総合大学、特に1849年に設立されたクィーンズ大学を、以下の三つのテーマ、(a)新設大学設立の請願と連合王国議会の反応(1830年代~1850年代)、(b)クィーンズ大学の入学者・卒業生に関する数量的考察 (1849年~1880年)、(c)教育内容の変化に関する実証的考察 (1849年~1880年)を設定し、分析を行うことを目的としている。 平成24年度は上述した(a)大学新設請願運動と連合王国の反応、というテーマを中心に研究を進めた。具体的には、(1)予備的な考察として、'19th & 20th c House of Commons Papers' などデータベースを活用し、議会議事録、委員会資料の収集、分析を行う、(2)アイルランド・コーク (Cork City & County Archives, University College Cork Library, University Archives) およびダブリン (National Archives of Ireland, National Library of Ireland, Trinity College Dublin, University College Dublin Archives, Royal Irish Academy ) での現地調査を行う、(3)収集した史資料の整理、論点の確認し、本格的な分析の準備を行う、という作業を行った。今後これらの作業に基づき、実証的な考察を進める。 これらの作業と並行し、歴史学研究会大会近代史部会においてコメント報告ならびに第二回日韓若手歴史研究者交流会議において口頭報告を行い、国内外の研究者に対して研究成果を公表するとともに、研究を進める上での示唆を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画の中心的な課題は、アイルランドの文書館ならびに図書館での文献調査であった。これは現地のアーキビストならびに図書館司書の支援を受け、当初予定していた史資料にスムーズにアクセスできただけでなく、その多くを電子化し持ち帰ることができた。今後はこれらの史資料に基づき、実証的な考察を進めていくこととなる。 一方で、当初予定していた国内調査(広島大学)は次年度以降に先送りすることとなった。これは当初予定していた閲覧予定の文献の一部がインターネット上の文献データベースから利用可能であったためである。しかし国内における先行研究を調査するためにも、同大学での調査は必須であり、次年度以降できるだけ早いタイミングで調査を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成24年度に得られた結果を基にして、(b)クィーンズ大学の入学者・卒業生に関する数量的考察、(c)教育内容の変化に関する実証的考察に取りかかる。具体的な工程としては、(1)入学者、卒業生データの数値化、(2)出身校、卒業後進路のマッピング、(3)設置講座の変遷についての考察、(4)使用テキスト、試験内容の変容についての調査、(5)教員評価の変遷についての分析、を行う。 これまでの調査を通じて収集した史資料から、評議会を含む大学組織、講座、教員配置、入学者数ならびその宗派、出身学校、教科書および試験問題などの詳細が明らかになっている。これらとともに、連合王国議会内委員会での高等教育を巡る議論を参照しつつ、19世紀中葉期の大学に対する国・社会からの期待と、大学そのものの変容を明らかにしていく。 これらの分析のデータを充実させるためにも、平成24年度に実施したコーク大学での調査だけでなく、クィーンズ大学の他のカレッジ(現在のクィーンズ大学(ベルファスト)、ゴールウェイ大学)でも調査を行い、文献、史資料の収集を行う。 また平成24年度に実施した分析についても論文としてまとめていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越し分は、上述した国内調査にかかる費用であり、次年度にそれを執行する。
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Research Products
(5 results)