2012 Fiscal Year Research-status Report
国際紛争の処理における住民移動と財産の所有権移転:20世紀ヨーロッパの事例から
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24720340
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川喜田 敦子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (80396837)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 紛争処理 / 住民移動 / 財産 / 20世紀 / ヨーロッパ / ドイツ |
Research Abstract |
本研究は、20世紀ヨーロッパにおける個人の居住権と財産権への国家の干渉について、国際紛争の処理における住民移動と財産の所有権移転に着目して検討する。そのなかで、「国家成員」概念の成立段階から存在した国民国家による自領域からの不要者の追放という問題が、20世紀にいかに一方で先鋭化し、他方で違法化される契機が与えられていくのか、国家の暴力に対する個人の保護の発想が国際法上のみならず補償の実務においていかに確立していくのか、そこで国際システムはどう機能したのかについて長期的な視野に立って考察する。これにより、近代国家と国民の関係、それを支える国際システムの連関と変容を再検討する視座を獲得することを目指すものである。 具体的には、A:20世紀前半のヨーロッパにおける住民移動と財産の所有権移転、B:第二次大戦の戦後処理、C:20世紀における国際法ならびに人道思想の発展の三領域についてとくに重点的に検討を加える。 平成24年度は、このうちとくにA、Bについて、先行研究の整理、各国の史料状況の確認を行なった。その際、主たる先行研究を入手するために、平成24年9月にドイツに渡航し、ベルリン州立図書館にて基本文献の調査と収集を行なった。またBについては、第二次世界大戦後のドイツ旧東部領ならびに東欧からのドイツ系移住者の統合政策とマーシャルプランの関連を調査するための資料としてBericht der Deutschen Bundesregierung ueber die Durchfuehrung des Marshallplanes(マーシャルプランの遂行に関する連邦政府報告書)(1949-52)を購入し、その分析を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が設定した三つの研究領域(A:20世紀前半のヨーロッパにおける住民移動と財産の所有権移転、B:第二次大戦の戦後処理、C:20世紀における国際法ならびに人道思想の発展)のうち、平成24年度は、AならびにBについて先行研究の整理、各国の史料状況の確認を改めて行なったうえで、本研究課題の中心的な対象地域であるドイツを中心に調査を行なうことを予定していた。 平成24年9月のベルリン州立図書館での調査では、A、Bに関する先行研究を多数入手することができた。ただし平成24年度は、本務先の異動のために、本来予定していた春季休業期間中の渡航調査ができず、ドイツ外務省政治文書館(在ベルリン)での史料収集を実現できなかった。そのため、当初は平成25年度に行なう予定であったが、Bericht der Deutschen Bundesregierung ueber die Durchfuehrung des Marshallplanes(マーシャルプランの遂行に関する連邦政府報告書)(1949-52)を購入し、その分析を行なうこととした。 したがって全体としては、計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、近代国家と国民の関係、それを支える国際システムの連関と変容について、国際紛争の処理における住民移動と財産の所有権移転という観点から見直すことを目的としている。重点的な検討対象としては、A:20世紀前半のヨーロッパにおける住民移動と財産の所有権移転、B:第二次大戦の戦後処理、C:国際法ならびに人道思想の発展という三領域を設定する。平成25年度は、このうちBについて、ドイツを中心に調査を行なう。 B:第二次大戦後の国境変動にともない、東欧一帯で1300万人をゆうに超える世界史上最大規模に近い複数の住民集団の移動が行なわれた。とくにドイツ系住民の財産は、領土割譲とならび、ドイツに課せられた戦争賠償の重要な一角となった。この問題については、(i)ドイツ在外財産をめぐる各国間の交渉、(ii) ナチ被害者補償と戦争賠償(在外財産)の連関、(iii) ヨーロッパ地域秩序の再編との関連を明らかにする必要がある。平成25年度は、これらの三つの観点から研究を進める。 この目的のため、平成25年度には、ドイツの主権回復の諸条件を定めたボン協定(1952)、連合国が賠償支払猶予に合意したロンドン債務協定(1953)、二国間協定(1950年代末~60年代初頭)の外交交渉での議論についてドイツ外務省政治文書館(在ベルリン)の所蔵資料を中心に検討することを予定している。 また、平成25年度は本研究の中間的な成果を活用して、日本国際政治学会で報告することが決定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究を遂行するため、平成25年度の研究費の使途としては、①公文書館(ドイツ外務省政治文書館(在ベルリン)予定)ならびにベルリン州立図書館等での史資料収集のためにドイツに渡航する際の渡航費、②上記調査の際の文献複写費、③その他参考文献の購入のための文献購入費、④上記調査の際の記録等のためのノートPC購入費等を予定している。
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