2012 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半におけるカナダ製造業の特殊発展過程と英米加経済関係
Project/Area Number |
24720343
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
福士 純 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60600947)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イギリス帝国史 / カナダ史 / アメリカ史 / カナダ製造業者 / 帝国連邦 / ナショナリズム |
Research Abstract |
課題『20世紀前半におけるカナダ製造業の特殊発展過程と英米加経済関係』の研究実施にあたり、平成24年度は交付申請書に記載した「研究実施計画」に基づき、以下の二点を中心に研究を進めた。 一つ目は、「二次文献の収集と先行研究の再検討」である。カナダ経済史、特に通商政策史や各種製造業者の経営史に関する文献、また2013年3月のカナダ調査の際に関連する最新論文の収集を行った。二つ目は、「海外での史料調査」である。今年度は、2013年3月にカナダにて史料調査を行った。申請時の計画では、2ヶ月の調査を予定していたが、勤務先での業務の都合上、2週間しか調査期間を確保することが出来なかった。そのため、当初計画していたカナダ・オンタリオ州のゲルフ大学、クイーンズ大学での調査のうち、前者のみでの調査を行った。しかしながら、調査期間は限定的となったが、調査先に対する事前の問い合わせと、二次文献による入念な下調べを行った上で調査に臨んだため、短期間ながら十分な調査を行うことが出来た。特に、調査前には想定していなかった研究対象となる農業機器業者マッセイ・ハリス社の詳細な会計簿、売上記録を発見することができたのは、研究推進の上で大きな成果と考えられる。これらの実施計画に基づく研究は、申請書にて言及した作業課題B「イギリス帝国からのアプローチ」で挙げた「カナダ製造業の帝国輸出市場開拓過程」を解明する上で極めて重要である。 海外調査を行ったのが2013年3月末であったため、いまだ収集した史料の分析は全てなされていない状況ではあるが、現在までの史料読解、分析の結果、マッセイ社が自社製品の実演販売を通して性能の高さを売り込む一方、広告にて「イギリス帝国の同胞」としての側面を強調することでカナダと同じイギリスの植民地オーストラリアでの販路拡大しようとしていたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
勤務先での業務の関係上、海外での史料調査が年度末である3月となってしまったため、史料の読解、分析が少し遅れている。しかし、遅れは若干であり、次年度以降の研究計画を妨げるほどではない。平成25年度以降に遅れを取り戻しつつ、成果を公表していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時に記載した研究計画に基づき、今年度以降も史料調査と分析を推進していきたい。その際、第一にイギリスの主要工業都市の商工会議所文書を調査する。具体的には、ロンドン・ギルドホール図書館(ロンドン商工会議所文書を所蔵)、マンチェスター中央図書館(マンチェスター会議所文書)、バーミンガム中央図書館(バーミンガム会議所文書)、リーズ大学図書館(リーズ会議所文書)にて、各一週間の調査を行う。第二に、カナダからの工業製品流入に対するオーストラリア商工業者の見解を解明するために、キャンベラにあるオーストラリア国立図書館、文書館にてオーストラリア各地の商工会議所の連合体であるオーストラリア商工会議所連合会の議事録や政府統計を収集する。この史料の入手は、オーストラリアの製造業者、貿易業者による対加貿易に対する見解を総体的に把握する上で有益と考えられる。特に後者に関して、今年度は今まで研究してこなかったオーストラリア経済史について研究を進めることになるので、二次文献の読解等を通して基礎を固めた上で、史料の調査、分析に臨みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付していただく研究費の大半は、研究計画にて述べたようにイギリス、オーストラリアでの史料調査に用いられる予定である。具体的には、渡航費、宿泊費、史料複写代に使用する予定である。残りは、上記「今後の推進方策」にても触れたが、オーストラリア経済史に関する文献の収集等に充てたいと考えている。研究代表者は、従来英米加経済史について研究を積み重ねるも、イギリス帝国内の植民地オーストラリアに関する経済史的理解や、オーストラリアとイギリスやカナダをはじめとする他の帝国地域との関係に関してはいまだ検討が不十分である。そのため、今年度に充実した史料調査を行う上でも、二次文献の収集、読解を事前に図ることが必要であり、この点にも研究費を使用する予定である。
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