2013 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半におけるカナダ製造業の特殊発展過程と英米加経済関係
Project/Area Number |
24720343
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
福士 純 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60600947)
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Keywords | イギリス帝国史 / カナダ史 / アメリカ史 / 経済史 / カナダ製造業 / 植民地ナショナリズム |
Research Abstract |
課題『20世紀前半におけるカナダ製造業の特殊発展過程と英米加経済関係』の研究実施にあたり、平成25年度は交付申請書に記載した「研究実施計画」に基づき、以下の二点を中心に研究を進めた。一つ目は、「海外での史料調査」である。今年度は、2013年8月末から9月初めにかけてイギリスにて史料調査を行った。 今回の調査では、ウォリック大学近代文書館(Modern Record Centre, University of Warwick)とロンドン大学政治経済学部(London School of Economics and Political Science, LSE)図書館にて作業を行った。前者の文書館訪問の目的は、主に20世紀前半におけるイギリス最大の製造業者団体であるイギリス産業連盟(Federation of British Industries)文書を収集することであり、約10日間の日程にて調査を行った。本調査にて収集した史料の分析は、交付申請書にて言及した作業課題B「イギリス帝国からのアプローチ」で挙げた「カナダ製造業の帝国輸出市場開拓過程」を解明する上で極めて重要である。本科研プロジェクト開始前、そして平成24年度の調査では、カナダ製造業の帝国市場進出過程を主にカナダ側から調査していた。これに対して、今回イギリスで収集した史料は、イギリス側からカナダ製造業の帝国市場進出過程、そしてカナダ工業製品流入に対するイギリス製造業者の認識を解明するのに不可欠である。 この検討の結果、イギリスの製造業者は、1920年代以降カナダからの工業製品輸入が増加し、イギリス市場が脅かされつつある状況の中で、カナダなどの植民地産品も含む工業製品保護を訴える一方、帝国特恵関税を支持して帝国経済ブロック内での発展を志向する二面性を有していたことを確認した。この内容は、平成26年度中に論文として発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度よりも順調に研究に取り組むことができたものの、研究成果の公表という点ではいまだ十分であったとは言えない。これは、申請時に予定していなかった単著刊行の話が入り、平成26年度5月末の刊行に向けて準備作業を並行して進めることになったためである。無論、この単著にも本研究課題の成果は反映されている。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時に記載した研究計画に基づき、今年度以降も調査を推進していきたい。具体的には、アメリカの製造業者団体であるNational Association of Manufacturers(NUM)のカナダ輸出、カナダ市場拡大に向けての動向を検討する。作業計画としては、第一に同団体の刊行史料が明治大学図書館にマイクロフィルム史料のかたちで閲覧可能となっているので、それを入手し分析する。その上で、NUMの未刊行史料が所蔵されているアメリカ、デラウェア州ウィルミントンのハグリー博物館・図書館(Hagley Museum and Library)での調査、史料収集を行い、課題についての検討を進めたい。加えて特に近年、この領域の研究は多く成果が蓄積されており、申請者も今回入手した文献、論文を通して最新の成果を踏まえた上で研究を公表すべく作業に取り組みたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、「現在までの達成度」の箇所にて説明したように順調に研究調査、そしてその後の入手史料分析を行うことができた。しかし、他方で申請時の予想以上に所属大学での校務が多くなり、研究に十分な時間を割くことができなくなった。特に、海外での調査に関して当初の予定よりも期間を短縮せざるを得なかった。そのため、研究費に残額が生じることとなってしまった。申請書に記載した、当初の研究計画通りの研究の実行、予算の使用を完全にすることはできなかったということは極めて遺憾であり、申請者の計画の見通しに問題があったことを認めざるを得ない。 上記のような理由のため、平成25年度は海外調査の予定を短縮した結果、調査時の滞在費数日分に相当する予算が残る結果となってしまった。しかし、この昨年度の残予算は平成26年度に予定しているアメリカでの史料調査の滞在期間を延長するために用い、より充実した調査を行いたいと考えている。
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