2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720346
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
江口 布由子 高知工業高等専門学校, 総合科学科, 准教授 (20531619)
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Keywords | 優生学史 / 子ども史 / オーストリア / 児童福祉 / 治療教育学史 |
Research Abstract |
本年度の業績としては,これまで収集および分析を行ってきた先行研究の状況を,大津留厚ほか(編)『ハプスブルク史研究入門』(昭和堂 2013)の「第16章 新しい国家、健やかな子」(pp.217~227)として発表した.また,この論文には,昨年度収集したオーストリアの児童福祉行政の外郭団体「児童保護・青少年福祉センター」の機関紙,およびウィーン大学医学部小児科を拠点とする「治療教育学」関連の史料分析の結果もごく一部であるが,盛り込んだ. また東中欧の優生学的政策や事業の展開において,決定的な役割を果たしたのがナショナリズムである.昨年度は現在の東中欧のナショナリズムに関する研究で第一人者であるT.ザーラの著作の書評を発表したが,本年度はそれを踏まえつつザーラ以外の研究者も含め研究状況の分析を,教育社会史研究会2013年秋季例会(2013 10/26 於 青山学院大学)にて発表した. その他に,昨年度末の海外出張では史料収集を行うと同時に,H.コンラート教授(グラーツ大学)のもとを訪問し国際情報交換を行った.その結果,ウィーン大学社会経済史研究所のR.ジーダー教授を中心とする研究グループが現在,戦間期と戦後の児童福祉史・子ども史に精力的に取り組んでいるとの情報を得た.とくにジーダー教授のグループは,戦間期のウィーンにおいてもっとも重要な児童福祉施設であったヴィルヘルミーネンベルク「子どもの家」に関する詳細な研究を進めていることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウィーン市に関しては概ね順調にいっている。しかし、2014年3月にオーストリアでの調査を行ったが、地方での子どもをめぐる優生学的児童福祉の展開についての資料収集が若干、遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,農村地域での児童福祉の展開や優生学の状況について,二次文献での一定の情報は得られているが,文書館調査などを通しても十分な史料がなお見つかっていない状況である.農村地域は19世紀来,地域差はあるものの里子の習慣が広がっており,戦間期にはその保護制度が児童福祉の主軸となった.こうした里子の選別と優生学の関係に絞って史料の探索を努めたい.都市部(ウィーン)については,「人口学」と「治療教育学」がウィーン市の優生学的な児童福祉政策に決定的な影響を与えたと推測されるため,今後はこの点にしぼって考察を深めたい.なお,本年度は最終年度であり,成果を論文で著わすとともに,本科研で収集した資料をホームページ上で発表するつもりである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外出張にて他の科研との用務を組み合わせ,旅費が当初の見積もりよりも少額となったため. 日本国内では,本研究テーマはもちろんのことであるが,近現代東中欧の福祉社会史関連の文献がきわめて手に入りにくい状況であることも鑑み,本科研だけでなく今後の研究の広がりのためにも積極的に文献や史料の収集を行いたい.
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Research Products
(2 results)