2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24720346
|
Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
江口 布由子 高知工業高等専門学校, 総合科学科, 准教授 (20531619)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 西洋史 / 東欧近現代史 / オーストリア近現代史 / 子ども史 / 優生学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、本研究の成果を、2014年10月11日に奈良女子大学にて開催されたハプスブルク史研究会・東欧史研究会の合同学会にて報告し、本研究に対する東欧史研究者からの批判や評価を得た(報告タイトル:戦間期オーストリアにおける優生学と児童福祉――ナチス優生政策はなぜ迅速に受け入れられたのか――)。 これまで本研究は「戦間期オーストリアにおいて児童保護および家族支援実践に優生思想がいかなる影響を与えたか、あるいは与えなかったのか」を明らかにすることを課題としてきた。調査・研究の結果、以下の三点を明らかにした。すなわち(1)「児童福祉センター」とオーストリアの優生思想系最大組織である「オーストリア民族改良・遺伝学連盟」の連携を通じて福祉実践家と優生思想の指導者たちが緊密な人的関係を築いていたこと、(2)しかし、児童福祉の実践においては新ラマルク主義が優勢でありドイツほど(とくに消極的)優生学の浸透はみられなかったこと、(3)それにもかかわらず、児童福祉分野のなかでも、養育費請求のための生物学的父親の遺伝的確定という「子どもの権利保護」活動において児童福祉と優生思想の結合が顕著に観られたことを明らかにした。東欧史研究会での発表においては、さらに踏み込み戦間期における親子関係の遺伝調査結果がナチスの優生政策(遺伝裁判所)の下地となったのではないか、という試論を提起したが、この点についてはなお30年代の動向を実証的に明らかにする必要があるという批評を得た。また、研究の過程で、もうひとつの「子どもの権利保護」活動として国籍確定と「本国送還」の実態を断片的であるが明らかにした。この点については優生学以外のファクターを考える必要があり、今後の研究課題としたい。
|
Remarks |
最終報告書としてWEBページを作成予定。
|
Research Products
(2 results)