2014 Fiscal Year Research-status Report
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24720349
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
上條 信彦 弘前大学, 人文学部, 准教授 (90534040)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 考古学 / 残存デンプン / 使用痕 / 磨石 / 縄文時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
青森県埋蔵文化財調査センターの協力のもと、遺跡土壌の水洗選別、花粉・プラントオパール分析を実施し、白神山地域のブナ林帯における植物質食料の利用変遷を解明した。分析の結果、この地域へのヒトの自然への関与は遅くとも縄文中期より始まっていたことが分かった。おそらく、この地域では大規模な集落が形成されはじめる縄文前期後葉(5,000BP)からコナラ亜属を含むブナ林を開発し始めたとみられる。縄文時代中期にはクリが極端に増加することが分かった。ところが、縄文時代晩期後半(2,900BP)になると、クリが減少し、トチノキが主体となる。トチは谷部などの湿性を好み、群落を作らないことから、丘の上にある捨て場から沢山見つかったということは縄文人が食べ物として利用していたと判断される。以上の成果は弘前大学白神自然環境研究所2015『白神学入門』(弘前大学出版会)にて一般向けに公開した。 使用痕分析、残存デンプン分析は、食料資源である植物種子が検出されており分析に有効な、埼玉県南鴻沼遺跡(縄文中期~後期初頭)、山形県押出遺跡(縄文前期)、同・.小山崎遺跡(縄文晩期)、秋田県中山遺跡(縄文晩期)、同・下台遺跡(縄文晩期)および、照葉樹林帯域の佐賀県東名遺跡(縄文早期後葉)で実施した。各分析結果を報告書にまとめるとともに、各類型の磨石・石皿類の使用痕パターンと残存デンプンを確認した。また、これまで行ってきた研究が評価され、第2回「村越潔賞」(青森県考古学会)を受賞した。 秋田県中山遺跡、同・下台遺跡については土器圧痕の観察を行い、縄文時代の終わり頃の土器である大洞A式・A´式土器からの種子圧痕を見出した。圧痕土器については、弘前大学人文学部北日本考古学研究センター特別展「東北の弥生化-縄文時代が変わるとき-」(2014年10月18日~11月24日)で展示を行い専門家との意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、遺跡試料の分析はほぼ終了したほか、各研究機関の協力により、比較試料を充実することができた。現在、各分析を総合化した報告を含めた著書の刊行段階までこぎつけている。また成果については一般書のほか、展示や学会発表というかたちで多角的に発信をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の結果、各分析結果を植物資源利用の観点から植物採集から食料化までの一連のモデルとして総合化を行い、縄文時代における食料加工からみた植物質資源利用の実態を解明する道筋がついた。課題としては縄文晩期の食料加工技術がこの後の弥生時代へどう引き継がれたのかがある。現状では水稲稲作が拡散したことは確かであるが、それ以上に1万年にわたる縄文時代から食料加工技術が汎列島的に消滅、変容する。その背景には植物採集活動における食料加工の変化だけでなく、文化的・社会的背景があると考えられ、今後、これらをリンクさせた食料加工技術論を展開させていく必要がある。
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Causes of Carryover |
26年度に礫石器の使用痕分析の結果を総括した著書を刊行する予定であったが、出版社の編集者の都合により、編集者を変更せざるを得なくなり、刊行スケジュールが大幅に遅れる見込みになり、計画を変更し改めて校正を行うこととしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析結果に関する著書の刊行を平成27年度に行うことにし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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Research Products
(4 results)