2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720357
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
岩井 浩人 青山学院大学, 文学部, 助教 (10582413)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 考古学 / 古代史 / 環壕集落 / 蝦夷 / 東北地方 |
Research Abstract |
本研究は、東北地方北部に分布する古代環壕集落の形成過程とその特質を解明することを目的としている。 環壕集落の特質を明らかにしていくには、実際に当該遺跡を踏査し、立地や周辺環境を把握することが重要である。そこで本年度は、研究実施計画に則して日本海側の環壕集落を踏査することを目標とし、青森市新田遺跡、同市高間遺跡、弘前市早稲田遺跡といった環壕集落関連遺跡を実際に踏査した。なお、野辺地町二十平遺跡、八戸市風張遺跡、同市林ノ前遺跡といった、次年度踏査する予定であった太平洋側の遺跡の一部についても、日本海側の遺跡と併せて効率的に巡ることが可能であったことから、踏査を敢行した。 また、環壕集落の形成過程を解明するには、環壕集落だけではなく、その前段階からの集落の時間的・空間的な動態を詳細に追っていく必要がある。そこで、日本海側の平安期集落を対象として、集落の継続時期や分布状況等を精査し、8世紀から11世紀にかけての集落の時空的な動態を把握した。その結果、これまで一元的に集落動態が把握されていた地域においても、小地域単位で集落の動態に明確な相違が見られ、環壕集落形成に至るまでに複雑なプロセスを歩んでいる事が判明した。そして、その地域的相違が生じた背景には集団差や生業差、自然環境の差異など存在している可能性が看取される。現在、集落動態の分析結果と環壕集落の形成要因、特質との関連を検証しており、本年度の研究成果として公表する準備を進めている。 なお、当該研究の実施にあたり資料整理補助員を選定し、青森・秋田県域の平安期遺跡の竪穴住居の床面積データを悉皆的に収集した。当該データから住居の居住単位の変化などを捉えることができるため、集落や地域の特質を捉える上で、有意義な補強データとなり得ると考えている。現在、2,000軒を超える竪穴住居の床面積を集計しており、次年度も引き続き収集する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも示したように、若干計画を変更して遺跡の現地踏査を行ったが、研究の推進には影響はないと考える。遺跡に関する各種データの収集も、調査補助員の助力を得ながら計画通り進んでいる。 また、各種データを基に、日本海側における平安期の集落動態や集落構造の分析を実施しており、本研究の目的である環壕集落の形成過程と特質の解明に、順調に取り組んでいる。 本年度中に、日本海側の遺跡を対象とした研究成果を公表する予定であったが、申請者の職務内容が変化し多忙となったことが原因で、公表に若干の遅れが生じている。ただし、研究全体の進捗状況としては概ね順調に進展しており、次年度早々に本年度の成果を公表する事で、大勢への影響を最小限に押さえる事が可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に則し、次年度は青森県東部から岩手県北部にかけての平安期集落の分析を実施する。現地踏査や遺跡に関する各種データの収集を行うとともに、集落動態や集落構造の分析を基に、環壕集落の形成要因や特質を明らかにしていく。 最終的には、本年度と次年度の研究成果を総合し、環濠集落の形成という北方古代史研究において注目される事象を、歴史体系の中に正確に位置づけていく事を目標とする。 また、早々に本年度の研究成果を学術雑誌に投稿するとともに、最終的には両年度の研究成果を総合し、論文投稿や学会発表といった形で、公表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
発掘調査報告書や考古学専門書といった参考文献等を購入する費用として「物品費」を使用する。また、東北地方北部に所在する遺跡の現地踏査を行うため、その往復交通費、宿泊費として「旅費」を使用する。 本年度に引き続き、発掘調査報告書から各種データを収集するため、資料整理補助員を複数名選定し、そのアルバイト代として「人件費・謝金」を使用する。「その他」費目に関しては、論文抜刷代やその送付代等に使用する予定である。 なお、当該年度の実支出額と所要額の差引額1,667円に関しては、各費目で必要に応じて使用する。
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