2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720357
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
岩井 浩人 青山学院大学, 文学部, 助教 (10582413)
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Keywords | 考古学 / 古代史 / 環壕集落 / 蝦夷 / 東北地方 / 防御性集落 |
Research Abstract |
本研究は、東北地方北部において10世紀後半から11世紀にかけて顕在化する環壕集落の形成過程とその特質を解明することを目的としている。 本年度は、昨年度に引き続き環壕集落の踏査を行う予定であったが、昨年度に当初よりも多くの遺跡を踏査できたことから、収集した資料の分析を集中的に行うこととした。特に、遺跡動態および集落内部の構造変化の解明を目的の主眼に据え、地域社会の一連の構造変化の中で環壕集落を位置づけることを目標とした。 その結果、従前の研究では一括して動向が把握されていた地域においても、遺跡動態や集落内部の構造変化の様相から小地域に区分することが可能であり、明確な環壕集落が形成される小地域は、前段階に急激な構造変化を経験している可能性が高いという結論を特定の地域で得ることができた。また、単一的な解釈の基で環壕集落の発生を捉えることは難しく、考古学的な基礎研究の中で位置づける必要があることを再確認した。次年度はさらに資料を収集し、同様の分析を他の地域に適用していく予定である。 なお、昨年度に引き続き資料整理補助員を選定し、東北地方北部の平安時代集落遺跡の竪穴住居の床面積データを悉皆的に収集している。当該データは、集落内部の構造変化を説明する際、そして集落を経営する集団の属性を抽出する際に活用しており、本研究において有意義なものとなっている。次年度も可能な限り、データ収集を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
集落動態および集落内部の構造変化を明かにし、環壕集落を一連の構造変化の中で理解することが本研究の根幹となるが、当該集落研究において最も重要と考えている津軽地域の分析を終えている。当該地域をテストケースとして周辺地域の分析を推進することが可能な状況にあるが、東北地方北部の太平洋側の資料収集がやや遅れている。 また、2014年度初頭に本研究の分析に重要な影響を与える『石江遺跡群発掘調査報告書』(総括編)が配布される。本発掘調査報告書の情報を組み入れ、津軽地域の分析結果を再検討する必要があるため、補助事業期間の延長を申請している。
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Strategy for Future Research Activity |
東北地方北部の太平洋側の資料収集および分析がやや遅れているため、早々に基礎データの整理を行い、日本海側の分析結果と対比できる状況にする予定である。また、並行して現地踏査を実施する予定である。 最終的には、これまでの研究成果を総合し、環壕集落の形成という北方古代史上重要な事象を、歴史体系の中に正確に位置づけることを目標とする。 なお、学術雑誌への投稿および学会発表などを通して、本研究の成果を順次公表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度に遺跡動態や集落構造の分析成果を公表する予定であったが、環壕集落の分析結果に重大な影響を与える『石江遺跡群発掘調査』(総括編)が2014年度初頭に配布されるため、本発掘調査報告書の情報を分析に組み入れ、既存の分析結果を再検討することが必要と判断した。それに伴い、資料調査や遺跡踏査の一部を2014年度に繰り下げて実施するという計画変更が生じたため、未使用額が発生した。 遺跡踏査および資料収集の諸経費(複写代、書籍代など)、報告書データ整理要員の謝礼代、本研究の成果をまとめた報告書の刊行費等に充当する予定である。
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