2012 Fiscal Year Research-status Report
浅鉢形土器の型式学的検討を通じた縄文社会構造の研究
Project/Area Number |
24720364
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
Principal Investigator |
井出 浩正 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (20434235)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 縄文時代 / 博物館学 / 縄文土器 / 深鉢 / 浅鉢 / 型式学 / 儀礼 / 社会構造 |
Research Abstract |
本研究は縄文時代中期における供膳具・供献具としての浅鉢の社会的機能に着目し、浅鉢の型式学的検討を通じた地域集団間の交渉史とその実態を明らかにすることを目的とする。研究を進めるにあたり、「A.浅鉢のデータ作成」、「B.浅鉢の法量計測と肉眼観察」、「C.浅鉢と深鉢の比較による両者の社会的機能差の抽出」という大きく3つの研究テーマを設定し、A、B、Cの順に研究を展開する。当該年度は主にA、Bに着手し、(1)遺跡出土浅鉢のデータベース化(文献〈発掘調査報告書等〉の悉皆調査と文献複写)、(2)浅鉢の実見・計測・観察(資料の実見と肉眼観察)、(3)研究成果として、関連分野の誌上発表1回と研究論文1本の発表等の実績を得ることができた。 (1)については、本年度は文献の悉皆調査(発掘調査報告書等)による、遺跡出土の浅鉢のデータベース化を進めた。当該研究が対象とする地域の発掘調査報告事例の検索と浅鉢が出土した事例の集積及び分析を実施した。当該年度のデータベース化は、主な対象地域である東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県、長野県、新潟県、福島県のうち、関東地方を中心に文献の検索と収集・複写作業等を進めることができた。(2)については、資料の実見・計測・観察を行った。対象地域として千葉県、茨城県域を選定し実施した。本研究を進める上で中心となる資料の確認と実見をすることができた。(3)については、(1)および(2)の成果を受け、当該研究に関連する誌上および研究論文を発表した。特に研究論文では、データベース化を踏まえた浅鉢の様相をまとめることができ、次年度以降の研究を進める上での基準資料をまとめることができたといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は2ヵ年の研究期間の1ヵ年目であり、研究計画に基づき「A.浅鉢のデータ作成」と「B.浅鉢の法量計測と肉眼観察」に着手した。Aにおいては、文献の悉皆調査による対象資料のデータベース化作業を中心に進め、型式学的検討に基づく浅鉢の集成および浅鉢が検出された遺構の種類と出土状況に基づく集成を実施した。データベース化の対象地域である関東、中部、北陸、南東北のうち、本研究の主要な対象地域である関東地方においては計画通りに進捗するなど、研究計画を踏まえつつ、ほぼ順調に進展している。 またBにおいては、浅鉢の法量計測、肉眼観察による被熱や彩色等の痕跡の調査を中心に進めている。本年度は本研究の中心的な対象地域の一つである千葉県、茨城県の資料について実見・計測・観察を実施することができ、それらの成果の一部として研究論文を発表することができた。 以上を踏まえ、本年度の研究は概ね順調に進展していると評価できると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は「A.浅鉢のデータ作成」、「B.浅鉢の法量計測と肉眼観察」、「C.浅鉢と深鉢の比較による両者の社会的機能差の抽出」の3つのテーマがあり、AからCの順に概ね展開する予定である。 Aは(1)遺跡出土浅鉢のデータベース化は文献(発掘調査報告書等)の悉皆調査と文献複写であり、前年度の調査分を踏まえつつデータの更新を図り、重要情報等の遺漏がないよう総合的なチェックを行う。Bは、(2)浅鉢の実見・計測・観察(資料の実見と肉眼観察)である。前年度のAのデータベースを基に、次年度に対象遺跡・資料を絞り集約的に実施する予定である。Cは、AおよびBを踏まえ、本研究の総合的成果として位置づけられる。A、Bで得られた諸成果を基に本研究の最終的な成果報告を行いたい。 研究の展開の手順上、前年度はAを中心に行ったが、Aの成果を受け次年度はBを集約的に実施する。次年度はデータベース化が完了した地域からBを進め、研究計画に基づき研究論文や研究発表、展覧会を通じて成果の公開を進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は「A.浅鉢のデータ作成」、「B.浅鉢の法量計測と肉眼観察」、「C.浅鉢と深鉢の比較による両者の社会的機能差の抽出」の3つのテーマに沿って研究を展開する。前年度はは主にAとBを中心に進めた。次年度も前年度の実績を踏まえつつ、AとBを進めつつCに着手する。以下に項目ごと次年度の研究費の使用計画の概要を示す。 Aは、(1)遺跡出土浅鉢のデータベース化は文献(発掘調査報告書等)の悉皆調査と文献複写である。主な対象地域である東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県、長野県、新潟県、福島県のうち、関東地方を中心に文献の検索と収集・複写作業等を進めているが、次年度はそれらの更新を含めた総合的なチェックを行う。重要文献の購入と文献複写に研究費を使用する予定である。Bは、(2)浅鉢の実見・計測・観察(資料の実見と肉眼観察)である。前年度のAのデータベースを基に、次年度に対象遺跡・資料を絞り集約的に実施する予定である。そのための旅費と消耗品費に研究費を充てる。Cは、AおよびBを踏まえ、本研究の総合的成果として位置づけられる。A、Bで得られたデジタルデータ・画像を編集する文章編集ソフトや関連消耗品に研究費を使用し、本研究の最終的な成果報告に用いる予定である。
|