2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720365
|
Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
東影 悠 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (60470283)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 考古学 / 古墳時代 / 埴輪 / 埴輪生産 / 製作技術 |
Research Abstract |
本研究は、古墳時代の王権の中心地である畿内地域の埴輪製作技術を分析し、製作技術の系統を識別すること、生産組織の単位を明らかにすることが目的である。 平成24年度は、奈良県内の埴輪に関する基礎的データを収集した。まず、発掘調査報告書および論文などの文献収集をおこなった。特に、古墳時代前期の王陵が造営された纒向・柳本・大和古墳群および佐紀盾列古墳群、馬見古墳群における資料収集をおこなった。資料収集によって得られたデータを元に、実際の資料の確認をおこない、奈良県立橿原考古学研究所所蔵資料を中心に資料の観察・写真撮影・実測図作成をおこなった。以上の作業を元に、製作技術系統の特徴を検討し、その系統整理をおこなった。 分析の結果、纒向・柳本・大和古墳群にみられる初期埴輪は、各古墳の埴輪の製作ごとに異なった製作技術の導入が認められることから、一貫した生産組織としての体制をとるものではない可能性が高いことが判明した。一方、佐紀盾列古墳群および馬見古墳群においては、斉一的なヒレ付き円筒埴輪や多種の形象埴輪の成立など、生産組織の統合が認められる。つまり、纒向・柳本・大和古墳群において埴輪生産組織が萌芽した後、組織の模索段階を経て、佐紀盾列古墳群および馬見古墳群の造営初期段階には組織の体系化がなされる。ただし、佐紀盾列古墳群および馬見古墳群においても、初期段階以降は、それぞれ異なる埴輪製作技術が認められるようになり、製作技術系統の分化が認められる。以上のように、時期を経るごとに埴輪生産組織が体系化し、さらに製作技術系統が分化していくことの実態を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の研究計画をほぼ実施し、またその分析成果についても概ね所期の目的を達成している。 ただし、一部で予定していた資料調査が未実施のものもある。当該資料の調査については次年度におこなうことにする。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、奈良県出土埴輪の収集と分析を補足し、これまでの研究成果をさらに充実したものとする。さらに、大阪府出土埴輪に関する基礎的データの収集と分析を主におこなう。大阪府出土埴輪の製作技術系統を明らかにし、これまでの研究で明らかにした奈良県出土埴輪の製作技術系統との対比をおこなう。 また、古墳築造動向などとの多角的な分析により、古墳時代における手工業生産組織である埴輪生産と王陵の築造動向との関連性について明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度、奈良県出土埴輪のうち宮内庁所蔵資料についての調査を予定していたが、双方の都合がつかず実施できなかった。そのため次年度使用額は主に旅費に関してのものである。これについては、次年度に調査を実施することで昨年度分の旅費を使用し、また、これまでの研究を補足することとする。 また、次年度は大阪府内の資料について分析を進めるため、必要に応じて所蔵機関へ出向き状況確認および打ち合わせ、観察、記録作成などの作業をおこなう。資料の収集や記録作成などの作業については、研究支援者(アルバイト)の補助を適宜受けながら進める。
|