2013 Fiscal Year Research-status Report
古墳時代墓制の終焉過程からみた律令国家形成期の北部九州
Project/Area Number |
24720370
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Research Institution | Kyushu Historical Museum |
Principal Investigator |
下原 幸裕 九州歴史資料館, その他部局等, 研究員 (30615836)
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Keywords | 古墳文化の終焉 / 律令国家形成期 / 地方社会 / 北部九州 |
Research Abstract |
本研究は、北部九州を対象に、古墳時代墓制の終焉過程を検討することで、律令国家形成に向けた政治的・社会的変化を地方の視点から考察することを目的としている。前年度は、筑前・筑後・豊前地域を中心に資料の収集と整理作業を実施した。2ヵ年目にあたる平成25年度は、豊前地域の一部と肥前地域について資料の収集等を行った。 研究は途上であるが、中間的に得られた成果を論文として発表した。まず、資料集成作業の過程で、北部九州では豊前地域の終末期古墳から偏在的に出土する頸基部突帯付須恵器壺・瓶類に注目し、畿内以西の分布傾向を検討し、瀬戸内海の西端に位置する豊前地域が、その立地環境から瀬戸内地方との文化的な接触や交流が色濃いことを改めて確認した(『福岡大学考古学論文集2』2013年)。この検討により、墓制の構造的な側面との検討が必要であるが、豊前地域と東方地域との文化的な近縁性は、北部九州における墓制を分析する上で不可欠な視点であることを再認識できた。 さらに、昨年度遺物の検討会を行った手光波切不動古墳の調査成果に基づき、北部九州における横口式石槨墓制の影響について考察を行い、畿内主導の墓制の統制とは関係なく、北部九州の側の主体的かつ限定的な墓制受容であったことが判明した(『九州歴史資料館論集』39 2014年)。このことは地方の墓制にまで中央集権的な解釈を行う傾向にあった従来の見解に対し、地方の主体性を軽視できない点を改めて確認するものである。一方で、中央における墓制の情報がさほど時期差もなく地方に到達していることも確認した。 以上の諸様相は、王権と地方との文化交流の側面と、地方間の文化交流の側面とが表出したもので、なおかつ諸要素が斑状に分布する状況は、王権による地方支配が単一の方式によっていないことを物語る。今後、墓制に対する検討を深めることで、実態がより明確になることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、前年度に引き続き、豊前、肥前について資料収集を行った。しかし、収集した情報に基づく各地域の古墳時代墓制の一覧表を作成する作業が難航した。その大きな理由は、とくに豊前地域における近年の新たな発掘調査事例の急増による検討作業量の増加と、既往の調査事例の再検討作業が予想以上に期間を要した点が挙げられる。当初の計画では、すでに豊後地域まで完了することになっていたが、一部資料の整理に着手したにとどまっている。 ただ、これまでの2ヵ年で筑前・筑後・豊前・肥前と北部九州の主要地域に対する資料収集作業が概ね完了していることから、当初の検討課題の分析への準備は固まりつつあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、豊後や壱岐・対馬に関する資料収集作業を進め、地域ごとの墓制の展開や、各地域を通じた墓制の終焉過程などを整理し、社会的背景も含めその特徴を考察する。 また、研究成果については、九州歴史資料館で成果に基づく展示を実施するとともに、成果報告書を刊行する。とくに、成果報告書では研究の基礎となる資料も掲載し、将来的に他者による成果の追試作業が可能となるよう配慮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、県外への資料調査を多数計画していたが、資料の収集とそれに伴う整理作業に遅れが生じたため、機会を逸したことが大きな原因である。また、その間も県内の資料について再実測作業も実施しているが、勤務先に大半の資料が保管されていることから、旅費の計上に至らなかったことも要因である。 平成26年度は、概ね資料収集作業が完了しつつあることから、県外への資料調査も前倒しで実施する。 また、年度後半に刊行する研究成果報告書については、当初の見込みよりも資料数が増加したため予定していたよりも多くのページになることから、次年度使用額を組み込むことで対応する。また、成果に基づく展示についても、展示解説シートを作成するとともに、資料の移送も当初の計画より増加する可能性が高いことから、旅費や委託費に加算・充当する。
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Research Products
(2 results)