2015 Fiscal Year Annual Research Report
古墳時代墓制の終焉過程からみた律令国家形成期の北部九州
Project/Area Number |
24720370
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Research Institution | Kyushu Historical Museum |
Principal Investigator |
下原 幸裕 九州歴史資料館, その他部局等, 研究員 (30615836)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 古墳時代墓制 / 北部九州 / 国家形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、北部九州の7世紀代を中心に高塚石室墳や横穴墓の他、石棺墓や土壙墓など、各種古墳時代墓制の終焉過程を分析することで、律令国家形成期における地域の様相を明らかにした。 北部九州各地の墓制の在り方から、7世紀中頃を境にした墓制の大きな変革が確認できた。7世紀前半代までは明確な首長墓が各地で確認できるのに対して、7世紀後半代にはほとんどの地域で首長墓が見出し難くなる。また、墳丘規模も急速に小型化するとともに、横穴墓も含めて墓室規模が小型化し、副葬品も被葬者が生前に身に付けていた装身具が伴う程度に簡素化する。こうした諸変化は、古墳(や横穴墓)の造墓における政治的・社会的な意義が後退していることを意味し、政治的・社会的な身分表徴としての「古墳」から、一個の埋葬施設である「墓」への変化と考えた。 その背景には、律令国家の形成に向けた様々な社会制度の展開や、列島を取り巻く東アジア世界情勢の変化などが大きく影響しているとみられ、当時の社会が完成された律令国家に向かって確実に成長し、発展していることを示している。 ただし、筑前地域などでは階層分化が顕著であるのに対して、肥前西部や対馬などではやや分化の程度が弱いなど、地域によって社会構造や規模に違いがある。また、筑前東部や豊後では高塚石室墳よりも横穴墓が卓越しているなど墓制の内容に差異が存在するものの、古墳時代墓制の終焉に向かう過程は概ね共通する点などから、地域社会の構造や規模に即した墓制の展開が認められており、地域の実態に即した支配体制の構築・強化が図られたことが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)