2012 Fiscal Year Research-status Report
整備新幹線建設にともなう都市空間形成の政治プロセスに関する研究
Project/Area Number |
24720374
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
武者 忠彦 信州大学, 経済学部, 准教授 (70432177)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 都市開発 / 新幹線 / 都市政策 / 都市政治 |
Research Abstract |
東海道新幹線の開通以降,全国に路線網が整備された新幹線が都市空間をどのように変え,その空間はどのような論理で形成されていったのか。こうした本研究の問いを明らかにするため,24年度はまず,資料調査などにもとづいて,新幹線全駅の駅周辺開発状況を整理した。その結果,新幹線駅周辺開発は①既存駅併設型都市の新幹線口=駅裏開発,②新設型都市のミニマム開発,③新設型都市の大規模な面的開発,④既存駅併設型都市の消極的開発の4つに類型化された。 次に,長野新幹線の佐久平駅周辺(佐久市)を事例に,M.カステルの都市政治理論などを下敷きにしながら,①「都市の目標」をめぐる都市政治(新幹線による近代化の物語の共有),②目標を具現化するための都市計画制度(近代都市計画の支配的価値観に規定された主体の行動)という2つの論点を分析した。 第1の論点について,新幹線をめぐる政治のイシューは,中央レベルでは規格,地元負担率,着工優先順位など,都市(地方)レベルでは誘致,ルート,駅名称,開発事業方式,環境アセスメント,在来線問題などがあったが,佐久市では,1960年代末より新幹線駅誘致による都市の近代化という目標が共有され,多様な主体が連携しながら,これらのイシューを順次解決していったことを明らかにした。 第2の論点である都市計画については,行政主導による〈地〉の書き換えと民間主導による〈図〉の書き込みという構図を仮説的に提示した。その上で,佐久平駅周辺は行政の近代都市計画の価値観にもとづく交通ネットワーク強化や土地利用純化,人口増加の志向によって田園地帯の大規模な土地利用転換と基盤整備が進んだこと,そうした基盤の上に,モールやマンションといった「大規模開発パッケージ」が大手資本と地元農協の主導によって速やかに塡め込まれていったことを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の課題は大きく分けて,①全国新幹線鉄道整備法(1970 年成立)以降の整備新幹線に関するデータの収集およびインタビュー対象者の選定,②新幹線全駅についての立地や開発状況の整理およびパイロット調査の実施であった。 ①の課題については,「財源問題等検討委員会」「整備新幹線建設促進検討委員会」など,政治プロセスを再構成するために最低限必要な中央省庁の主要な委員会についての資料を収集したほか,各地の建設促進同盟会に関する資料も得られた。一方,インタビュー調査の選定については,財源問題等検討委員会をはじめとする各種委員会に関与した元官僚や元政治家などを予定していたが,やや難航している。 ②の課題については,資料調査にもとづいて,新幹線全97駅の開発状況を体系的に整理することができた。また,全体のパイロット調査として,長野県佐久市において現地調査を実施し,25 年度以降の本格的な調査に向けて,調査項目の洗い出しや調査内容の再検討などを予め実施し,調査のフォーマットを整えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度以降の課題は大きく分けて,①整備新幹線計画の関係主体へのインタビュー調査,②調査候補都市の見直しと佐久市における予備的調査をふまえた本調査の実施,③調査結果をふまえた都市間比較分析と研究成果の発表となる。 ①の課題については,インタビュー調査対象者の選定が遅れているが,25年度中にも本調査へ以降できるように準備をすすめる。元官僚や元国会議員などへのアクセスが課題となっているが,地方議員や地元有力者など,手が付けられる調査から順次進めていきたい。②の課題については,佐久市での調査により調査項目が洗い出され,調査内容の再検討によって全体調査のフォーマットが固まりつつあるので,それにもとづいた調査を順次すすめる。なお,調査は長野,福岡,高崎,大宮,新神戸,新花巻,本庄早稲田の順に進める予定である。③の課題については,研究成果をまとめるための作業となるため,最終年度の27年度に実施予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品等の購入を除いて,25年度の研究費の多くは現地調査(インタビュー調査・資料収集)の国内旅費に充当する計画となっている。具体的には長野市(5日間×3 回),福岡市(7日間×2 回),高崎市(5日間×3回)などを予定している。なお,当初計画時よりも,備品を安価で購入できたため,次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(1 results)