2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本におけるアグリビジネスの発展と農産物「契約生産」の地域的展開
Project/Area Number |
24720378
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
後藤 拓也 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 准教授 (00452798)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | アグリビジネス / 企業の農業参入 / 企業の社会的責任 / 植物工場 / 生鮮トマト農場 / 高知県三原村 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本におけるアグリビジネスの展開例として、カゴメ株式会社(以下、カゴメ)による生鮮トマト栽培への参入を取り上げた。具体的には、カゴメがどのような地域を選択して農業参入し、それによって地域がいかなる影響を受けたのかを、高知県三原村での調査を通じて検討した。 分析の結果、カゴメは1990年代後半から生鮮トマト農場を立地展開してきたが、その立地条件として日照時間や水利などの自然条件を重視してきたことが判明した。しかし現実的には、過疎化に悩む自治体からの誘致によって農場を立地させるケースが西日本を中心に多く確認される。カゴメが農場を立地させた自治体のうち、高知県三原村は唯一の村で最も人口規模が小さいことから、カゴメの進出による影響が大きいと判断し、調査対象に選定した。 三原村は、過疎化で停滞する地域経済を活性化すべく、2003年にカゴメの農場を誘致した。カゴメ進出に伴う三原村への影響を分析した結果、農業生産の拡大、新規雇用者の増加、農場を中心とする人材交流といった効果が確認された。しかし農業生産面では、農場と周辺農家や農協との技術的・組織的な交流は乏しく、農場は地域農業から乖離した存在となっている。また雇用面をみると、農場の雇用者はパートを含めて50名に達するが、その多くが村外からの雇用であり、村民の雇用に寄与するという本来の目的は十分に達成されていない。また人材交流の面では、農場が見学者の受入など積極的な地域貢献を試みているが、防疫面の理由から外部者の頻繁な受け入れが困難であるなど、必ずしも継続的な交流はなされていない。 このようにカゴメの進出は、三原村の地域振興に一定の役割を果たしているものの、必ずしも誘致当初に期待された効果はもたらされていない。本研究で得られた結果は、近年増加している企業主導の植物工場が地域社会に定着する上で、少なからぬ課題があることを示している。
|
Research Products
(2 results)