2012 Fiscal Year Research-status Report
トンガのカボチャ生産をめぐる生産者群の動態と社会・資源利用の変動
Project/Area Number |
24720379
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大呂 興平 大分大学, 経済学部, 准教授 (50370622)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トンガ / カボチャ / 農産物 / 資源利用 / 農業 |
Research Abstract |
研究の初年度である平成24年度の主な研究目標は,1) カボチャをめぐる日本市場の動向や海外の生産状況についての統計分析,2) 日本のカボチャ輸入業者への聞き取り調査,3) トンガでの調査・資料収集を通じたカボチャ産業の変動やそのインパクトに関する大局的把握であった.まず,1)については,野菜生産出荷統計,東京都中央卸売市場統計,農業センサス,貿易統計等を使用して,1970年代から現在までの日本のカボチャ市場の長期的変化を分析し,その中での海外産,とくにトンガ産カボチャの位置づけの変化を明らかにした.この成果は現在,論文に取りまとめている.2)については,日本のカボチャ輸入業者3社へのヒアリングを行い,日本のカボチャ市場の変化,海外からのカボチャ調達方法や契約方法などを把握した.また,調査を通じてトンガの輸出業者や生産者にも人脈を得ることができた.3) トンガでは,農業省や元首相,王族関係者,輸出業者,生産者などカボチャ産業に関わった約20名にヒアリングを行い,カボチャ導入の経緯や撤退の理由,現在の課題や経営状況等を幅広く把握した.加えて,トンガ農業省やニュージーランドのオークランド大学で,カボチャに関連する行政資料や統計資料を収集した.以上の調査を通じて,2000年代以降,日本市場におけるカボチャ需要が低迷していること,こうした中,主なカボチャ輸出国であるニュージーランドやメキシコでは生産規模の拡大が急速に進んだこと,にもかかわらず,トンガでは,産地として生産性を向上させ品質を改善する集団的な対応が十分に取られることがなくその競争力を失ったこと等が明らかになった.来年度は,トンガ内部における各主体の行動原理を掘り下げ,こうしたメカニズムを詳細に明らかにするとともに,農業の技術体系,資源利用の変化を集中的に分析する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおりトンガでの現地調査を行い,カボチャ輸入の経緯や土地利用の変化をおおむね把握することができた.現地の統計資料・行政資料には一部に欠損があり時系列的な把握が困難なものもあるが,ニュージーランドの大学に所蔵する資料などでほぼ補えている.また,日本の輸入業者への聞き取りや統計分析も順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に行った大局的な把握を踏まえて,今後は本格的な調査を実施したい.綿密な調査計画のもとで現地に長期滞在し,調査を実施する.聞き取り内容の焦点を絞り,できるだけ多数の生産者,政府関係者,輸出業者,援助団体等に聞き取り調査を行う.これを通じて,トンガのカボチャ生産に伴う生産者群の技術変化や,農業経営の変化,土地資源利用変化を把握するとともに,政策や援助がどのように対応したのかを把握する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2週間以上の現地調査を少なくとも2回実施したい.加えて,トンガの地域研究や,日本の食料調達に関する文献の購入やデータ整理にも,研究費を使用したい.
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