2015 Fiscal Year Annual Research Report
トンガのカボチャ生産をめぐる生産者群の動態と社会・資源利用の変動
Project/Area Number |
24720379
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大呂 興平 大分大学, 経済学部, 准教授 (50370622)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トンガ / カボチャ / 農産物 / 資源利用 / 国際価値連鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目までの調査研究を通じて,2000年代以降の日本向けカボチャ生産をめぐり,トンガでは労働生産性や土地生産性が向上せず,また,日本市場の求める質・量のカボチャを安定的に供給できなかったことが明らかにされていた.また,トンガでは,カボチャの劇的な生産拡大・縮小に伴い,土地利用が大きく変化したことも明らかになっていた.4年目の平成27年度は,補足的な現地調査で得られた資料や統計の解析を進め,論文投稿に耐えられるデータ整備を進めるとともに,上記の現象のメカニズムを精緻に把握することに努めた. その結果,土地利用変化については,トンガ農林水産省が所有していた毎年のカボチャ作付け地に関するGISデータが得られ,1990年代の土地利用変化が一筆単位で確認できたため,トンガの土地利用の変化が詳細に把握された.また,トンガにおいて,カボチャをめぐる生産性が向上せず安定供給に失敗した背景には,1980年代後半に王族主導で確立されたカボチャの産地システムが,民間主導を謳う新自由主義的な改革のもとに崩壊したことが明らかになった.乱立する輸出業者が機会主義的に生産者との取引を繰り返し,「小さな」政府もこれをほとんど規制できなかったため,輸出企業による搾取が助長されていった. トンガのカボチャ産業の成立・発展のためには,かつてない資本集約的な生産体制,収穫,選果,輸出までの長大な連鎖,さらに生産数量や品質を安定させつつ産者や輸出業者に生産性向上を志向させる仕組みといった,新たな産地システムが必要であったはずである.調査者は,こうした産地システムが,トンガで誰によりどのように整備されたのか,あるいはなぜ整備されなかったのかという分析軸から研究をとりまとめ,成果を公表していく予定である.
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