2013 Fiscal Year Annual Research Report
「文化的景観」における歴史地理学の貢献可能性についての検討
Project/Area Number |
24720380
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
上杉 和央 京都府立大学, 文学部, 准教授 (70379030)
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Keywords | 文化的景観 / 地理学 / 文化財 / 行政 / 学術 / 社会貢献 |
Research Abstract |
平成25年度は、文化的景観に関連する主要書籍・論文・資料の収集とその分析、文化的景観事業に取り組んでいる(ないし取り組もうとしている)地域の実態調査、そして平成24年度に実施したアンケート調査の結果の分析を行った。 特に重要な結果となったのが、アンケート調査の分析である。そこでは、文化財担当者の多くが景観についての理解が乏しく、都市計画や農村計画、また景観行政といった自治体内の他部局の仕事のイメージから景観概念を構築していることがまず明らかとなった。また、文化的景観と学術の関係については、歴史学や建築学が連想されることが多く、景観を学問の中心の一つに据えてきた地理学(ないし歴史地理学)については、文化財担当者にあまり認知されていないという現状もうかがえた。 ただし、すでに重要文化的景観の選定を受けた自治体の担当者のアンケート結果だけを抽出すると、地理学の認知度は上がり、実際的な場面における地理学の貢献は可能であり、また求められていることが分かった。 本研究は歴史地理学の貢献課題を中心課題としたが、きわめて広範囲な対象を扱う文化的景観の場合、調査・評価・計画・活用をトータルにコーディネートするための知識提供が不可欠である。それぞれの固有の学問分野を土台を保持しつつも、たとえば「文化的景観学」といった新たな学の有り方も考える必要があることが明らかとなった。 本研究の成果については、人文地理学会大会で報告して地理学者に周知するとともに、『地理』誌への投稿をして、その成果を広く公開した。また文化財関係者への公表を果たすために『月刊文化財』誌への掲載を予定(受理)している。
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Research Products
(3 results)