2012 Fiscal Year Research-status Report
階級からみるオリシャ崇拝の変容:アフリカ由来の神を崇拝するアメリカ黒人の社会運動
Project/Area Number |
24720389
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小池 郁子 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (60452299)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 文化人類学 / 植民地主義 / 宗教実践 / 階級 / 人種・民族 / 移動誌 / 社会運動 / ブラック・ディアスポラ |
Research Abstract |
本年度の研究では、アメリカ黒人の社会運動において、人種、階級、宗教がどのように交錯しているのかについて、社会運動における階級的少数派、および少数派の異議申し立てと運動の変容に着目しつつ検討した。 オリシャ崇拝運動は、中産階級の成員によって、儀礼的に限られているものの社会運動を「脱ディアスポラ化」[ヴィヴィオルカ2009]する側面がみられる。この場合の脱ディアスポラ化とは、アフリカ大陸出身のアメリカ黒人(オリシャ崇拝者)が出身地とされる土地に儀礼的に帰る、すなわちヨルバランドの宗教実践を経験し、その知識技術を学ぶという(再)ディアスポラ化である。この傾向は、運動に従事する中産階級の通過儀礼となったといえよう。ただし、この傾向は、中産階級の成員と、儀礼的にアフリカの土地に帰ることのできない下層階級の成員との相克を生み出す一因となっている。これによって、運動には二つの比較的新しい事象がみられる。一つは、新しい社会運動が階級によって分裂し、その基盤が脆弱になりつつあるため、下層階級が運動の基盤を再構築しようとしていること。いま一つは、中産階級によって、宗教実践の商品化が促進されているということである。より厳密には、宗教実践の商品化の領域において、アメリカ黒人の崇拝者とアメリカ白人の崇拝者(オリシャ崇拝とほかの(新)新興宗教との混淆宗教の実践者)との関心が交錯し、人種を越えた相互交渉が進むとともに、文化の帰属や真正性等をめぐる諸問題が生じている。下層階級による社会運動の最活性化の一つとして、下層階級(とりわけ男性成員)の実践の場を取り戻そうという動きがある。そこでは、オリシャ崇拝の宗教的家族の概念を踏まえた共同性の構築と、地域社会との接続による自己の時間と社会空間の形成が目指されている。これは、地域社会や国家との分離をもとに運動の基盤を形成した運動初期の実践形態とは異なる点である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究は、研究目的および研究実施計画にしたがってほぼ順調に進展している。平成24年度は資料文献の収集・精査 、ならびに文化人類学的な現地調査を中期間にわたり実施することができた。そのため、アメリカ黒人をはじめとする黒人の社会運動や、市民運動、文化運動そのほかにおいて、人種、階級、宗教がどのように交錯しているのかを、資料文献等の二次資料からだけでなく、具体例をともなう一時資料をもとに考察することが可能となり、研究を当初の予定どおり遂行することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究はおおむね順調に進展したため、今後の研究においても、研究目的および研究実施計画にしたがって取り組めるよう留意する。とりわけ、今後も予定している文化人類学的な現地調査は、中期間から長期間にわたって実施する必要があるため、調査対象者、協力者そのほかとの入念な打合せとその後のフォローアップが欠かせない。そのため、時間的余裕をもって現地調査に望めるよう準備にとりかかる。また、本研究は、その研究目的を達成するため、現地調査と連携させつつ、その研究内容を補足、発展させるべく資料文献の収集、精査に従事するよう努める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(2 results)