2013 Fiscal Year Research-status Report
階級からみるオリシャ崇拝の変容:アフリカ由来の神を崇拝するアメリカ黒人の社会運動
Project/Area Number |
24720389
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小池 郁子 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (60452299)
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Keywords | 文化人類学 / 植民地主義 / 宗教実践 / 階級 / 人種・民族 / 移動 / 社会運動 / アフリカン・ディアスポラ |
Research Abstract |
本年度の研究では、オリシャ崇拝運動において、人種、階級、宗教がどのように交錯しているのかについて、下層階級を主とした少数派の異議申し立てと運動の展開、ならびに、運動における宗教的家組織と下層階級にみられる非宗教上の「家族」問題との関わりについて検討した。 以下、「ひとり」に認められる価値という側面から述べる。オリシャ崇拝運動の男性結社の活動では、婚姻歴、子の有無、年齢、性別を問わず、「ひとりもの」を規範的な家族からの逸脱とは捉えていない。そこには、既成のカテゴリーに束縛されることのない「ひとり」が存在可能となる。換言すれば、ひとりが集まることで、同世代、異世代を問わず、他者と関われる枠組みを提供しているのが、男性結社の活動の場という社会空間である。くわえて、結社の活動は、ひとりのまま、他者と連携することで、地域社会を変化させられる枠組みへと発展する可能性を秘めている。このように、運動が築く男性結社の活動は、ひとりでいることに価値を認め、ひとりのまま他者との関係を築く場を提供する。それゆえに、ほかの時代のアメリカ黒人の社会運動(黒人運動)に認められた家族形成や性をめぐる規範(ジェンダー規範)から、女性だけでなく、男性、とりわけ下層階級に属する男性を解放するのではないだろうか。つまり、女性は男性に保護されるべきではなく、服従する必要もない。同様に、男性は女性を保護するべきではなく、管理監督する(服従させる)必要もない。したがって、ほかの時代の社会運動と異なり、男性は奴隷制度や人種主義的差別制度で失われたとされる権威、とりわけ社会的、性的な権威を回復することに努めたり、誇示したりする必要に迫られないのである。以上、オリシャ崇拝運動における宗教的家組織の男性結社でみられるジェンダー規範は、かつてコミューンを拠点とした集合的な運動のジェンダー規範とも異なる様相を呈している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究は、研究目的および研究実施計画にしたがってほぼ順調に進展している。平成25年度は資料文献の収集・精査 、ならびに文化人類学的な研究調査を実施した。そのため、社会運動や、市民運動、文化運動そのほかの運動において、人種、階級、宗教がどのように交錯しているのかを具体的に考察することが可能となった。また、宗教的家組織にみられる諸概念が非宗教上の家族の現象とどのような関わりがあるのかを、階級との関連から検討し、当初の予定どおり研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究はおおむね順調に進展したため、今後の研究においても、研究目的および研究実施計画にしたがって取り組めるよう留意する。とりわけ、最終年度も予定している文化人類学的な現地調査は、中期間から長期間にわたって実施する必要があるため、調査対象者、協力者そのほかとの入念な打合せとその後のフォローアップが欠かせない。そのため、時間的余裕をもって現地調査に望めるよう準備にとりかかる。また、本研究は、その研究目的を達成するため、現地調査と連携させつつ、その研究内容を補足、発展させるべく資料文献の収集、精査に従事するよう努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究では、社会運動における男性覇権主義および軍事的性格について検討し、資料文献の収集・精査する必要があった。その際、社会運動の男性覇権主義に関する資料文献の収集・精査に重点的に取り組んだうえで、社会運動の軍事的性格の資料文献の収集・精査に取りかかることが研究調査上必要であると判断した。そのため、後者に係る一部研究調査に関して次年度使用額が生じた。 平成26年度の研究の早期段階において、社会運動の軍事的性格に関する資料文献の収集・精査をおこない、次年度使用額分を支出する計画である。それに平行しつつ、平成26年度の研究実施計画にしたがって研究を実施する。
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Research Products
(4 results)