2013 Fiscal Year Research-status Report
身体と情動の経済:人体の医学的利用に関する経済人類学的研究
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24720390
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 吾郎 大阪大学, 人間科学研究科, 研究員 (20583991)
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Keywords | 経済人類学 / 生経済 / 情動 / 身体 / 病院の民族誌 |
Research Abstract |
今年度の調査を通じて明らかになってきたのは、情動の問題を扱うことが、合理的な判断に基づく経済取引の分析とは異なる、身体的コミュニケーションに基づいた実践の分析枠組みとして意義を持つという点である。断片的な経験の連なりや、必ずしも一貫しない動作から生み出される実践の連鎖をとらえるための理論的枠組みの検討をする必要がある。この点で、必ずしも意図の明確でない身体的なコミュニケーションから意味が生成するプロセスを理解するために、プラグマティズムの再考が引き続き課題となっている。これは、当初想定していた人類学における技術論との親和性が極めて高いことも明らかとなり、来年度の主要な研究課題となる。 昨年度から継続して主に病院で実施している調査は、計画通りに進行した。患者とその家族からの聞き取りや病院内でのフィールドワークを実施し、基礎的なデータの収集を行うことができた。病院側とのラポールは良好であり、今後別の研究テーマ(特に終末期に関わるケア実践、意識障害を患った患者とのコミュニケーションや意思決定の問題)に取り組む可能性が得られたことは大きな成果といえる。 本年度の研究業績として、二本の論文と一本のワーキングペーパーを執筆し公刊した。また、平成26年5月、6月、8月にそれぞれ行われる国際学会(IUAES, Deleuze studies, 4S)において、本研究の成果を発表することが決定した(査読済)。さらに、平成26年度の研究成果公開促進費(科学研究費補助金、学術図書部門)の申請が新たに採択されたことで、これまで行ってきた臓器移植医療に関する研究成果を総括し、書籍として出版することが実施的に内定した。このことで、来年度の本研究の計画の実現(成果物の出版)に向けて、一定の見通しを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病院での調査は順調に進めており、研究の成果も国内外の主要な学会において発表している。また、来年度に計画していた成果物の出版についても、出版助成を得たことで計画の実現性が高まった。最終年度となる来年度に向けて、必要な準備はすべて滞りなく進んでいると評価できる。調査を行う中で、新たな研究テーマの萌芽を得ることができたことは、想定を上回る成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集したデータや資料等の検討を行い、本研究の総括に向けて研究を進める。当初の研究計画を遂行するための準備は整っており、特に、前半は研究成果の出版準備と国際学会での発表、後半は論文の執筆に取り組むこととなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度の研究計画を実施するための予算。 調査のための出張費、国際学会での発表に際して使用する旅費、英語論文執筆時の英文校閲費として大部分を使用する。その他、研究に必要となる事務用品・消耗品の購入に充てる。
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