2014 Fiscal Year Annual Research Report
身体と情動の経済:人体の医学的利用に関する経済人類学的研究
Project/Area Number |
24720390
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 吾郎 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (20583991)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 経済人類学 / 情動 / 身体 / 病院の民族誌 / 生政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる平成26年度は、当初の計画の通り、論文の執筆や出版の準備など、研究成果の発表を重点的行った。(1)単著の出版、(2)翻訳出版、(3)論文および国際学会等での発表が主な成果物である。 (1)平成26年度科学研究費補助金・研究成果公開促進費が採択されたことにより、研究成果を単著としてまとめ、『臓器移植の人類学:身体の贈与と情動の経済』(世界思想社、2015年2月)の出版を果たしたことが最も重要な成果である。同書では、人間の身体を資源とする医療行為を情動の経済としてとらえ、人間の身体に備わる人格性や、やり取りにともなって生じるさまざまな情動が、人々の行為や、特殊な観念の形成に大きな影響を与えていることを分析した。そして、身体性を備えた経済の特徴を具体的に示し、情動の経済というアプローチの理論的な可能性について論じた。 (2)本研究課題にとって最も重要な先行研究のひとつであるニコラス・ローズ『生そのものの政治学:二十一世紀の生物医学、権力、主体性』(法政大学出版局、2014年)の共訳出版を果たしたことで、国際的な研究動向のなかでの本研究の位置づけを明らかにするとともに、理論的な課題についても示すことができた。また、医療人類学や、同様の関心を共有する隣接分野の進展にも一定の寄与をすることができたと考える。 (3)病院において行ってきた調査の成果については、国際学会の場や論文の形で発表しており、特に、情動の経済の分析枠組みを、人間と非人間のコミュニケーションのあり方へと展開する道筋をつけたことで、今後の研究課題を明確にすることができた。
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