2013 Fiscal Year Research-status Report
スラム観光をめぐる人類学的研究―ラテンアメリカの現状から
Project/Area Number |
24720397
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
内藤 順子 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (50567295)
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Keywords | プロプアー / スラム観光 / チリ / メキシコ / 貧困 |
Research Abstract |
観光とは、観光地となる場所やそこに暮らす人びとに利益と悪影響を表裏一体でもたらす現象である。本研究ではプロプアー(貧困にやさしい)という理念のもとここ数年でツアーとして商品化され、世界の複数都市において実施され始めた「スラム観光」についての人類学的調査である。スラム観光は貧困者の生活基盤確立に寄与するのか、倫理的問題はいかに検討されてクリアされるのか、利害と弊害について多角的な考察を進めている。 具体的には、スラムそのものが観光資源(利益の源)になるという、これまで想定されなかった事態の現状について、現地調査によって明らかにしていく傍らで、理念・概念研究を通時・共時の両側面から把握することが必要である。本年度は所属異動により、本研究以外の日常的業務に従事する時間が多くなった都合で渡航調査を実施できなかったため、とくに理念・概念研究を精力的に進めた。本課題をとりまく概念群や事象、キーワード(スラム観光、PPT、オルタナティブツーリズム、コミュニティベースドツーリズムなど)についての整理及び、研究展開について、研究資料の充実した国立民族学博物館およびアジア太平洋センターにおいて文献研究を行った。また、関連テーマを研究する国内の研究者との研究会および議論をとおして、初年度に実際にメキシコ調査により得た資料とてらして考察を進めるに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡航調査に関しては、研究実績項目にも記したとおり必ずしも年度計画どおりは進んでいないものの、いっぽうで文献研究および理論的なプロプアーおよびスラム観光の現状把握については想定よりも進展し、かつ、初年度の現地調査資料の分析も進んだ。その結果、本年度は成果として論文を1本公表したほか、日本文化人類学会および共同研究会において口頭研究発表をし、アウトプットも順調に行えている。また、関連テーマを研究する国内の研究者とともに3度にわたり討論会・研究会をひらく機会を設けることができたことも、自らの研究展開にとって有意義であった。よって総合的に判断して研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究計画では地域間比較を念頭に置いており、当初はチリ・メキシコ・ブラジルを考えていたが、昨年度の段階で、ブラジルの渡航・現地滞在費がオリンピックとFIFA開催により高騰しているため見直しをはかり、おなじカトリック圏であり、またスラム観光の先駆けであるフィリピンに変更することとしていた。しかし、2013年度中はフィリピン現地の台風と地震の災害による被害が多大であり、実施できなかった。そのため、最終年度に向けては、現地の状況が改善され次第フィリピンを視野に入れつつ、チリとメキシコを重点的に調査する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属異動に伴い十分な渡航調査機関を確保できなかったこと、また調査対象地域であるブラジルにおけるFIFAおよびオリンピック開催にともない現地滞在費が高騰しているためフィリピンに対象を変更する計画を立てたものの、対象地域が台風と地震によって多大な自然災害被害をうけたため渡航できなかった。そのため理論研究および文献研究を重点的に進める計画に切り替えたため、渡航費がほぼ全額繰越金として生じることとなった。 最終年度はチリおよびメキシコにおける現地調査を重点的に行う予定である。研究費は主として旅費に充てるほか、現地調査補助の謝金を支出するほか、消耗品および必要機器類を購入する計画である。
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Research Products
(3 results)