2012 Fiscal Year Research-status Report
現代バングラデシュの「教育第一世代」による「青年期の創出」と社会変容
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24720400
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
南出 和余 桃山学院大学, 国際教養学部, 講師 (80456780)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バングラデシュ / 青年期 / 教育第一世代 / 就職 / 出稼ぎ / 結婚 / 学歴形成 / 社会変容 |
Research Abstract |
1980年代後半以降のバングラデシュの特に農村部における急速な教育普及は、現在の20歳代を境とした世代間に、教育経験における大きな差をもたらした。そうした意味で、バングラデシュの現在の若者たちは、「教育第一世代」として、親世代の経験とは異なる「子ども期」「青年期」を過ごしている。本研究は、このバングラデシュの教育第一世代に見られる青年期の変容を、①個人の経験、②家族の生活戦略、③彼らの経験がもたらす農村社会の変容、という側面から検討することを目的としている。 研究初年度であった平成24年度は、主に現地調査によるデータ収集に取り組んだ。8月から9月にかけてと、2月に、バングラデシュの農村および首都ダッカでの現地調査を実施した。調査の対象とした若者たちは、研究代表者が2000年当時の彼らの子ども期から調査対象にしてきた38名であり、初年度はこの38人の現状把握に従事し、可能な限り本人に面会して、自らの「過去」「現在」「将来」についての認識を聞き取った。彼ら彼女らは、まさに、学歴形成の継続と離脱、出稼ぎのための都市移動、結婚による実家と婚家の往来を経験する、青年期のターニングポイントにあり、その決定主体と経過理由を明らかにするに適した状況にあった。 これらの現地調査で得られたデータを基に「教育第一世代の教育経験―バングラデシュにおける教育と社会移動」と題した論文を執筆し、この論文は、他の科研研究との合同によって、現在、出版の準備を進めている。また、研究代表者が以前に調査地の農村から海外(ギリシャ)に出稼ぎに出ている青年を撮影した映像を基にして、出稼ぎに送り出す家族の認識を捉えるために撮影を重ね、これを1本の民族誌映画としてまとめる作業を進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度は現地調査によるデータの収集が目的であった。対象として想定していた38名の現状把握は達成した。それに加えて、出稼ぎ先の首都ダッカの縫製工場における調査にも着手することができた。 成果においても、当初の計画では2年目に論文執筆および映像作品制作を予定していたが、すでに着手できており、本研究期間の終了までに一部公開の見通しが立っている。また、映像作品に関しては、研究期間の終了までに国内外の映画祭にて上映を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は研究期間を2年間としているため、平成25年度が最終年度となる。 平成25年度は、前年度の38名の調査を発展させ、調査地の地域性を客観的に把握するためにも、バングラデシュ各地農村から出稼ぎに来ている若者が働く首都ダッカ近郊の縫製工場でのアンケートおよびインタビュー調査を実施する。そのことは、現在のバングラデシュの輸出品目の約7割を占める縫製業の急成長を根底で支えているのが、まさに彼ら、教育第一世代の若者たちであり、その実態を捉えることにも繋がる。 「高度経済成長期における青年期の生活変容」は、バングラデシュに限らず、また先進国発展途上国を問わず、経済活動と社会変容を捉えるうえで要となる視点である。今まさにその状況にあるバングラデシュにおいて、グローバルに展開する若者たちの移動を実態と認識の両方から議論することで、個人のライフサイクルと社会変動の呼応関係を具体的に示すことができるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、追加の現地調査および研究成果発表に重点を置くため、研究費用途のうち旅費としての使用が多くを占めることとなる。バングラデシュでの現地調査は9月に約3週間を予定している。また、研究成果に関する口頭発表は、主に、6月に開催される日本文化人類学会(於・慶応大学)と、7月にオーストラリア国立大学で開催される国際シンポジウム“South Asian Childhoods”、9月にミャンマー・マンダレー大学で開催される国際ワークショップ、10月に開催される日本南アジア学会(於・広島大学)で発表する。映像作品についても、6月の日本文化人類学会、10月の日本南アジア学会、10月に台湾科学研究所で開催される「台湾民族誌映画祭」での発表を予定している。 加えて、英文による論文執筆をおこなうため、英文校閲に掛かる費用を予定している。
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