2013 Fiscal Year Research-status Report
中古品と非正規品の越境交易にみる現代アフリカの消費文化に関する研究
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24720402
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小川 さやか 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (40582656)
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Keywords | 中古品 / 非正規品 / 越境交易 / 消費 / 知的財産権 / 中国 / 東アフリカ / 山寨製品 |
Research Abstract |
中古品・非正規品は、日本をふくむ先進諸国の消費文化(使い捨て文化や、イメージや記号の消費にもとづく消費文化)とふかく関係して生み出された特別な商品である。本研究の目的は、欧米やアジア諸国で破棄/生産され、アフリカ諸国に輸出されているこの二つの商品が、東アフリカ諸国間を越境交易で循環し消費される過程と、この「モノの履歴」における価値変化の実態を、現地調査を通じて明らかにすることにある。また、そこから従来の西欧中心的な消費文化論を、「廃棄から再消費」あるいは「コピーから消費」の世界から再考し、文化人類学の立場から新たな消費文化論を構想することを目指している。 本年度は、8月4日から9日までイギリスのマンチェスター大学で開催された17th The World Congress of International Union of Anthropology and Ethnologyに参加し、研究成果を公開した他、2013年9月9日から9月28日までタンザニアに渡航し、やり残していたブルンジやルワンダを含め東アフリカ諸国間の中古品と非正規品の流通システムを明らかにした。また消費者の購買行動に関して各都市の比較調査を実施した。2014年3月26日から29日までは、愛媛県松山市・新居浜市で実施されている衣料リサイクル活動について調査した。 その成果は上記の国際学会のほか複数の学会・講演会で発表した。また昨年度中に中古衣料品と非正規衣料品の供給システムの比較に関する論文と、インフォーマル交易の活性化を促すローカルな論理に関する論文を執筆し、それぞれアジア経済研究所および世界思想社から2014年度前期に出版予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は中国での調査はできなかったものの、中国の大学とのネットワークづくりに成功し、その準備を整えることができた。また東アフリカ諸国には計画通り渡航し、短期間ながらも充実したデータを収集することができた。また日本のリサイクル業者とのネットワークを形成することもできた。 また本年度、昨年度に模索していた学術ネットワークを広げ、次年度以降の研究の足がかりを整えることができたとともに、複数の研究会や研究組織での発表・討論を通じて本研究が貢献しうる研究領域・問題が明らかになった。まず、国際日本文化研究センターの共同研究『商取引・藝術創作・海賊行為』に参加し、広義の海賊行為が文化創造に果たす正負の側面(ストリート的な創造力/知的財産権等の問題など)についても知識を深めることができた。またアジア経済研究所共同研究会『国際リユースと発展途上国』に本研究の成果として提出した最終報告書が書籍化されることが決定した。さらに光文社の雑誌『宝石』上で『Living for Todayの人類学』と題し、リサイクルや使い捨ての論理、中国-アフリカ諸国間のインフォーマル交易の活性化の背景など「今日(現在)を生き延びる」という論理から解きほぐし、未来優位の時間の感覚と生産主義的な主体観を再考する趣旨で一般向けの連載を2014年秋から始めることが決定しており、研究成果の社会的還元の糸口も見つけられた。 中古品と非正規品の二つの商品のうち、中古品の流通・消費については全体像を把握し、一定の成果を出すことができたと考えている。次年度からは、非正規品の輸出元である中国での調査に力を入れ、主に非正規品交易の全体像の把握に努めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、本研究課題の中古品と非正規品の流通・消費のうち、中古品の流通・消費については一定の成果を出すことができたと考えている。そのため、26年度以降は東アフリカ諸国から中国の広州市「チョコレート城」・烏義市の雑貨の卸売市場に本格的にフィールド対象地を移し、中国商人とアフリカ系商人との関係や取引の実態について解明していきたい。 平成26年度前半は、前年度に執筆した論文を刊行する。また5月16日に東京で開催予定のThe World Congress of International Union of Anthropology and Ethnologyに参加し、交易人たちの組織化の現状を報告する。8月9月にかけて中国に渡航し、上述の調査を実施予定である。12月に立命館大学先端総合学術研究科に申請者を受入教員として、中国の非正規品交易に詳しいゴードン・マシュー教授を招聘することが決定しており、中国-アフリカ諸国間の交易を中心に、下からのグローバル化を考えるシンポジウムを企画する。それを踏まえて下半期には『文化人類学』(日本文化人類学会)等で特集を組み、論文を投稿する計画である。
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