2014 Fiscal Year Research-status Report
中古品と非正規品の越境交易にみる現代アフリカの消費文化に関する研究
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24720402
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小川 さやか 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (40582656)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中古品 / 非正規品 / 越境交易 / 消費 / 知的財産権 / 中国 / 東アフリカ / 下からのグローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
中古品・非正規品は日本をふくむ先進諸国の消費文化(使い捨て文化や、イメージや記号の消費にもとづく消費文化)とふかく関係して生み出された特別な商品である。本研究の目的は、欧米やアジア諸国で廃棄/生産され、アフリカ諸国に輸出されているこの二つの商品が、東アフリカ諸国間を越境交易で循環し消費される過程と、この「モノの履歴」における価値変化の実態を、現地調査を通じて明らかにすることにある。 近年、中国を起点とした模造品やコピー商品のインフォーマルな交易の台頭に注目する研究が盛んにおこなわれている。これらの研究者たちは、この交易に関わる当事者にとっての「法的な違法性illegal」と「道義的な違反性illicit」との違いに着目しながら、この交易が「上からのグローバル化」とどのように異なるダイナミズムを有しているのかを論じてきた。本年度は、非正規品の交易をこれらの議論に位置づけ、主流派経済との関係だけでなく、同じインフォーマル交易を担うアクター間でこの二つの違法性がどのように揺れ動くのかを多角的に明らかにした。 主たる成果は以下の通りである。国際人類学民族学連合(IUAES)において報告を行った他、『国際リユースと発展途上国』(児島道一編2014年)に論文を寄稿した。12月には上述した議論の主要な論者であるゴードン・マシューズ氏を特別講師として受け入れ、ワークショップを開催した。また12月より『小説宝石』誌上で「living for todayの人類学」と題し模造品の海賊行為やその消費文化と「その日を生きる」価値・実践との連続性をめぐる小論を連載した。2月にタンザニアで調査を行い、消費者が模造品の何を騙しとみなすかを明らかにした。この成果の一部を『社会人類学年報』(首都大学東京)に投稿した。3月8日から13日に中国浙江省義烏市に渡航しアフリカ商人による模造品の買いつけを参与観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、不足していたデータを補うためのタンザニアでの消費行動の調査とともに、中国最大の雑貨品卸売市場における非正規品取引についても充実した調査を行うことができた。またその成果を国際学会での報告や論文として公開することができた。調査や論文執筆を進めると同時に、主要な先行研究の論者であるゴードン・マシューズ氏を招聘し、当該研究課題について議論することで理論的にも深めることができた。さらに研究成果の社会的還元として昨年度に計画した、リサイクルや使い捨て文化をめぐる消費者の論理や、中国―アフリカ諸国間のインフォーマル交易の背景などを「今日(現在)を生き延びる」論理と結び付けて論じる、光文社の雑誌『宝石』誌上での連載も実現し、すでに半分の連載を終えた。また講演やトークイベントにも積極的に参加し、研究成果の社会的還元に努めた。そのほか、グローバル化と空間論に関する文化人類学の特集にも論文を寄稿し、現在査読中である。このように着実に成果を公開してきたことから、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
中古品流通については平成26年度までに一定の成果を出すことができ、また非正規品流通についてもアフリカ諸国での流通・消費に関しては概要をつかむことができた。平成27年度には、中国の広州市および義烏市での非正規品の買いつけ調査に重点を置き、非正規品の交易・消費の全体像を明らかにしたい。 また最終年度にあたる平成27年度は成果公開に努めたい。国立民族学博物館の共同研究「贈与論再考」の成果報告論集や立命館大学で開催してきた『アフリカの社会変容と笑い』の成果論集への寄稿が決定しているほか、現在連載中の雑誌原稿を基礎として当該科研費の課題の成果を単著として出版することを目指したい。
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