2015 Fiscal Year Annual Research Report
中古品と非正規品の越境交易にみる現代アフリカの消費文化に関する研究
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24720402
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小川 さやか 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (40582656)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中古品 / 非正規品 / 越境交易 / 消費 / 知的財産権 / 中国 / 東アフリカ / 下からのグローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
中古品・非正規品は日本をふくむ先進諸国の消費文化とふかく関係して生み出された特別な商品である。本研究の目的は、欧米やアジア諸国で廃棄/生産され、アフリカ諸国に輸出されているこの二つの商品が、東アフリカ諸国間を越境交易で循環し消費される過程と、この「モノの履歴」における価値変化の実態を、現地調査を通じて明らかにすることにある。本年度は成果公開に重点を置いて活動し、以下の成果について、業績一覧にある通り、学術論文・図書への寄稿や国内外の学会等での発表、『小説宝石』上での連載を通じて学術界・一般社会に広く公開した。また9月にタンザニア、2月に中国の深セン市で補足的な調査を実施した。 本研究の主な成果は以下の3点である。第一に、中古品と非正規品の流通(供給)システムの違いを実証的に明らかにしたことである。第二に、中古品・非正規品の生産・交易・消費の活性化には「特有の時間的な世界・生き方」とそれに基づく特有の経済戦略がかかわっていることを提示した点である。例えば、均質的・直線的な時間軸の上に未来を企図せず、いま可能な行為に賭け続けるというインフォーマル経済従事者の生き方は「試しにやってみて、失敗したら転戦する」という模造品の生産・交易に共通したダイナミズムに直結している。模造品の購買行動を特徴づける「必要性に迫られた消費」と「衝動買い」は一見矛盾するようにみえても、「計画的な消費」の困難性を示している点で同じである。第三に、主流派の経済システムとの関係を問うために「法的な違法性illegal」と「道義的な違法性illicit」の違いに焦点を当ててインフォーマルな非正規品・中古品の問題を議論してきた従来研究を、同じインフォーマルな交易内部における道義的違法性と道義的合法性の関係に着目して再考した点である。これらを総合して、本研究では中古品・非正規品交易を検討する新しい視座を開拓した。
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