2013 Fiscal Year Annual Research Report
被害者遺族による意見陳述が裁判官の量刑判断に及ぼす影響
Project/Area Number |
24730002
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐伯 昌彦 千葉大学, 法経学部, 准教授 (10547813)
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Keywords | 刑事裁判 / 被害者参加 / 量刑 / 意見陳述制度 |
Research Abstract |
本研究は、刑事裁判における被害者参加の一形態である意見陳述制度の利用の有無が、裁判官による量刑判断にどのような影響を及ぼすのかについて実証的な検討を加えたものである。 具体的には、刑事裁判の確定記録104件を謄写し、そこから必要な情報を抽出し、データを統計的手法等を用いて解析するということが行われた。調査の対象とした事案は、自動車運転に起因する致死事件であるため、その知見の一般化には限界があった。他方で、一定の重大事件についてはすでに裁判員裁判によって判断がなされるようになっているところ、意見陳述制度が裁判官の量刑判断に及ぼす影響を検証するためには、被害者による参加がある程度の件数存在し、かつ裁判官のみによって判断がなされている事件に限定して調査をすることには、実践的な意義があると評価することもできよう。 ここで、具体的な分析結果についてであるが、本研究では、まず意見陳述制度の利用の有無を規定するであろうと考えられる要因について仮説を設け、それを検証する作業が行われた。これは、最終的に意見陳述制度の利用の有無と量刑判断との関係を調べるために統制すべき変数を特定することを目的とするものであるが、この分析によって意見陳述制度の利用を規定する要因について一定の知見を得ることができた。 次に、意見陳述制度の利用の有無と量刑判断との関連について分析を行った。ここで、量刑判断の内容は多様であり得るが、ここでは執行猶予とするか実刑とするかという二者択一的な判断場面を従属変数として採用した。これは、英米法圏の先行研究を踏まえる限り、このような二者択一的判断において被害者参加の影響が最も生じやすい可能性があったからである。サンプル数の限界もあり明確な知見を示すことは難しいが、意見陳述制度の利用が量刑判断に影響している可能性、およびその影響のメカニズムとして考えられる仮説を示すことができた。
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