2014 Fiscal Year Annual Research Report
熟議民主主義における「コミュニケーション」の正当性と正統性
Project/Area Number |
24730004
|
Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
菅原 寧格 北海学園大学, 法学部, 准教授 (20431299)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 法哲学 / 法思想史 / コミュニケーション / ウェーバー / ヤスパース / アレント / ハーバーマス / 熟議民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の最終年度として、本年度は2年間に渡って検討を重ねてきた「コミュニケーション」の概念を規範的観点から再構成し、現代社会における熟議民主主義が成り立つための正当性と正統性の条件を探ることで、研究全体のまとめを行った。具体的には、①事例研究を通じて、「熟議」の在り方を規定する「コミュニケーション」の正当性や正統性が問題となる局面の総合的考察を行いつつ、②なお残されたと思われる課題の検討を行った。 ①に関しては、2014年3月から4月に起きた台湾の学生による立法院占拠事件が、政府与党の政治運営に対する学生や市民の側からによる単なる異議申し立てにとどまらず、民主政における「対話」の不在を問題化した政治運動であったことから、第一に政治の場における「対話」の成立可能性は熟議民主主義の基盤になり得るということ、だが、第二に政治的決定を下す場面においては手続的正当性のみならず、むしろ熟議の有無に応じた民主的正統性の存否こそが、民主政を現実のものとして受け止める際には決定的に問われている、ということを確認した。また、〈民主主義〉と〈自由主義〉という思想史的観点からみれば相反する価値が、現代民主主義社会においてもなお原理的次元では対立背景として控えていることを明らかにし、東アジア法哲学会のワークショップにおいて報告を行った。 ②に関しては、いかなる人間像が「コミュニケーション」の担い手として期待されることになるのか、ヤスパースの「コミュニケーション」論をアレントにおける「人格」に関する議論を参照することによって検討した。その結果、「人格」に潜む「偽善」の克服が主な課題になるものの、それは「コミュニケーション」の在り方に依存する問題であることを明らかにし、法理学研究会で報告するとともに論考としてもまとめ、次年度に公表する準備を整えた。
|
Research Products
(4 results)