2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730005
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
鈴木 秀光 専修大学, 法学部, 准教授 (30361059)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 中国法制史 / 刑事裁判 / 財産犯 / 十九世紀 |
Research Abstract |
平成24年度は、皇帝や中央官庁の政策決定に関する史料、および地方における各上司の対応に関する史料の収集分析を行った。前者について、皇帝に関しては嘉慶以降の各皇帝の「上諭档」や『清実録』を調査し、中央官庁の刑部に関しては「説帖」や『刑案匯覧』を、また条例に帰結したものについてはその制定経緯が判明する『大清律例按語』などを調査した。後者については、各官僚の文集を中心に調査を行った。 上記作業を通じて確認できたこととして、一つには、制度変革および法運用の双方において先行研究で十分に問題視されてなかった事象を特に見出せなかったことが挙げられる。次年度も引き続き史料の収集と分析を行うが、そこにおいてはすでに重要性が指摘されている制度変革や法運用を実証的に解明することを中心に行われるべきであろう。 もう一つは、本研究の目的である十九世紀中国における財産犯処罰を巡る様々な対策を解明してその特質を抽出するにあたって、十九世紀全体をひとしなみに対象とするよりも、むしろその前半にあたる太平天国期以前の嘉慶・道光期を中心に検討する方が望ましいという認識に至ったことが挙げられる。例えば十九世紀後半に行われた就地正法の存廃論争に見られるように、十九世紀後半の動きは、太平天国期に事実上機能停止に至ったそれまでの裁判制度をどの程度まで再興させるかが中心となっていた。ここで言う「それまでの裁判制度」とは太平天国直前のそれ、すなわち十九世紀前半における制度変革の帰結として成立したものであるため、その意味で十九世紀の特質はその前半期の様々な制度変革によって基本的には出揃ったと考えられる。したがって次年度においては、嘉慶・道光期の制度変革や法運用を中心に検討をすべきであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は史料の収集・分析が中心であったが、行政区画末端の州県の裁判実務に関わる史料よりも皇帝や中央官庁の政策決定に関する史料、および地方における各上司の対応に関する史料の方が分量的に多いと考えられたため、後者を中心に収集・分析を行った。そして当初想定した程度には行うことができたと考えている。とりわけ検討する対象や時期を絞り込めるに至ったことは、研究作業の進展において大きな収穫であった。 なおこの年度は海外調査として北京に渡航しての調査を行ったが、関連する先行研究を見出すことについては一定の収穫があったものの、史料的には特に重要な情報は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の最終年度となる平成25年度は、前年度と同様に史料の収集・分析を行う一方、分析結果を公表するための論文作成も行う。 史料の収集・分析は、平成24年度の成果を踏まえて、十九世紀前半の嘉慶・道光期における制度変革や法運用に関する史料を中心に行う。その際、皇帝や中央の政策決定過程や地方各上司の対応に関する史料は一部重要なものに止め、前年度はあまり行わなかった裁判実務関係の史料の収集・分析を行う。なおこの関係で平成25年度は台湾での海外調査を予定している。 以上の史料の収集・分析は基本的には夏季休暇までとし、秋以降は論文の作成に集中する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、史資料の収集において当初の想定よりも購入可能なものが多かったため、「その他」として計上した複写費分を「物品費」に充当したほか、二回の海外調査を一回に減らして「旅費」の一部を「物品費」に充当した。「次年度使用額」は、渡航回数を減らして「旅費」の一部を「物品費」に充当した残額として生じたものである。 平成25年度は、引き続き史資料を購入するほか、台湾での海外調査を予定している。台湾での調査は平成24年度に行わなかった分を併せて行なうことを予定しているため、「旅費」は当初の予定額よりも多くなることが想定されるが、その増加分として「次年度使用額」を充当することを考えている。
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