2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730006
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
赤城 美恵子 帝京大学, 法学部, 講師 (60374881)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 中国法制史 / 清朝初期 / 裁判制度 / 滞獄 |
Research Abstract |
本研究は、犯罪者を拘禁しながら裁判手続を進めることなく未決のまま獄に放置する「滞獄」問題に対して清朝が講じた対応策やその実態を解明し、それにより清朝司法制度の特徴を考察することを目的としている。研究は関連史料の調査・収集、及びその分析、さらにその結果をふまえての考察という段階で進められる。研究初年度は、このうち特に、史料の調査・収集・分析に重点を置き、研究を遂行した。 伝統中国において、諸々の政策は官僚からの上奏文とそれに対する皇帝の指示を通じて議論される。また、裁判は統治機構がこれを行う。したがって、当時の政策に関する議論や裁判の実態は、残存する行政文書史料の分析によって解明される。清朝の行政文書史料は中国第一歴史档案館並びに台湾中央研究院に所蔵される。そこで、両機関に赴き、関連史料の調査・収集を行った。これは本研究の基盤となる、重要な作業である。両機関では作業の合理化のため文献複写を依頼し、複写史料を日本に持ち帰り、日本で史料の整理・分析を進めた。なお、本研究で分析の対象とする行政文書にはその内容の概略を記載した「貼黄」が付されることになっており、収集した史料を整理する際に、この貼黄が残存している場合には一読して、まずは当該史料の概略を把握し、その後史料の精読・分析を行うという方針をとった。 同時に、清朝初期の法制度に関連する他の史料(大清会典・律例・その他法令集、官僚の手記など)を調査・収集し、精読・分析を行った。この作業は、国内では国会図書館、国立公文書館、東京大学などにおいて、国外では北京の中国国家図書館や北京大学図書館、台湾故宮博物院文献館などにおいて行った。 史料の精読・分析はまだ途中ではあるが、以上の作業を通じて得られた知見に基づき、研究をまとめる際の大まかなアウトラインを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の作業として、中国第一歴史档案館並びに台湾中央研究院所蔵の清朝初期行政文書史料の調査・収集、国内外各研究機関における清朝初期法制に関する史料の調査・収集、収集した史料の整理・分析を計画していたが、いずれも順調に遂行することができた。 とりわけ、中国第一歴史档案館並びに台湾中央研究院における作業は、作業合理化の方針が功を奏し、短期間で想定以上の史料の調査・収集を行うことができた。また両機関での調査を実行する前に、日本で『明清档案』(台湾中央研究院所蔵の行政文書史料の一部を印刷出版したもの)所収の関連史料を閲覧していたため、具体的なイメージを持って史料を調査することができたことも、効果的であった。 さらに、行政文書史料に付された「貼黄」を一読して当該史料の概略を把握するという方針をとったため、史料の精読・分析がいまだ途中でありながらも、研究をまとめる際の大まかなアウトラインを作成することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の作業を継続する。今年度収集してきた行政文書史料につき、整理・分析を進める。同時に、今年度利用することができなかった国内の研究機関に赴き、清朝初期法制に関連する文書史料の調査・収集・分析を行う。収集した史料の分析及びそれに基づく考察により、現在仮説的に導いているアウトラインに補強・修正を加えて、報告をまとめる。 8月下旬に行われる東洋法制史研究会において報告を行う(エントリー済み)。この研究会は国内東洋法制史研究者が参集する場であり、そこでの報告・質疑応答は本研究の内容向上のためには重要であると考える。この研究会報告をまとめるまでに現れた問題点、あるいはこの研究会で判明した問題点の解決のため、必要に応じて、夏期休暇中に国外研究機関に赴き、行政文書史料等の収集に当たる。 以上で得られた結果をもとにして、再度考察を加え、平成25年度中に論文にまとめ、公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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