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2012 Fiscal Year Research-status Report

紛争の場におけるフェア・ユース―アメリカ著作権法理は実務で活かされているか

Research Project

Project/Area Number 24730008
Research InstitutionSetsunan University

Principal Investigator

家本 真実  摂南大学, 法学部, 准教授 (10411703)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2014-03-31
Keywords著作権法 / フェア・ユース / 国際情報交換 / アメリカ
Research Abstract

本研究の目的は、アメリカの著作権法理であるフェア・ユースが、最近どのような事柄において議論されているのか、またこれまでの研究および判例が、どの程度問題の解決に活かされているといえるのか、または活かされていないのかを調査することである。まず、これまでの判例や研究論文を読み進めていくこととしたが、そのうちに、最近フェア・ユースが問題となっている事例の1つに、他人の芸術作品を基に新たな芸術作品を作り上げるという「アプロプリエーション・アート」に関するものが挙げられることがわかってきた。
そこで、他人の写真をキャンバスに貼り付けてその上に絵の具を塗るなどして絵画作品に仕立て上げたアプロプリエーション・アートが、著作権侵害であるとして裁判で争われた2つの判決を比較して、裁判所がどのような論理でフェア・ユースと判断し、また判断しなかったのかを調べるとともに、そこから見て取れる課題を検討してみることとした。これについては、「アプロプリエーション・アート(appropriation art)におけるフェア・ユース―Cariou v. Prince, 784 F.Supp.2d 337(S.D.N.Y. 2011)を中心に」と題した論文にまとめ、2013年1月発行の摂南法学第46号29頁以下に発表した。表題に挙げた2011年のCariou事件では、被告の作品における他人の写真の使用はフェア・ユースとはいえないとの判断がなされたが、その理由付けにはやや強引といえる部分があり、2006年のBlanch v. Koons事件判決が被告の作品をフェア・ユースであるとした際の理由付けやこれまでのフェア・ユース法理の運用方法と比べてみても納得できるものではないこと、またこれらの判決から見て取れる、アプロプリエーション・アートを含む芸術作品のフェア・ユースの判断における今後の課題を指摘した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

フェア・ユースが争われる最近の事例として、アプロプリエーション・アートが挙げられること、およびそれが法廷で争われるとどのような判断がなされているか、またこうした争いが起きた際の解決にあたってどのような課題があると思われるかということについては、平成24年度中の研究においていくらか判明してきたところではある。
また、他人の著作物を使用して新たな創作された新たな作品がフェア・ユースかどうかで問題となってきた場合に、訴訟に至る前に当事者の間で、また弁護士の交渉を通して、どのように解決を目指す試みがおこなわれているのかについても、平成24年度中にいくらか調査を進める予定であったが、調査中のCariou事件については地方裁判所での判決ののち上訴されていたため、原告や被告の弁護人や当事者に直接インタビューすることができず、この点については追究することができなかった。したがってこれらの点については次年度の研究において、調査を続けていきたい。
上記のとおりCariou事件については調査途中ではあるが、被告が大変著名な芸術家であることや、同種の事例であるBlanch v. Koons事件判決とは異なり、Cariou事件の被告の作品は著作権侵害であると判断されたため、地裁の判決であってもアメリカの法曹界だけでなく芸術界においても注目を集めた事例であった。そこでBlanch事件と比較してフェア・ユース法理運用の現状を考察することも意義があると考え、その結果を「アプロプリエーション・アート(appropriation art)におけるフェア・ユース―Cariou v. Prince, 784 F.Supp.2d 337 (S.D.N.Y. 2011) を中心に」として2013年1月発行の摂南法学第46号29頁以下に発表したという点で、研究は順当に進んでいるということができる。

Strategy for Future Research Activity

平成24年度は、最近フェア・ユースが裁判で争われている事例がどのようなものか、またそれらの判決についての検討をおこなってきた。
次年度は、初年度の調査において取り上げたCariou事件について、引き続き調査を続けたい。Cariou事件は上訴されていて判決が待たれるところであるため、引き続きその動向に注目するとともに、可能な限り、この事件の原告・被告の弁護士などに接触を試みて、この事例で弁護士として依頼人とどのようなやり取りがあり、また当事者間でどのような交渉がおこなわれたのかをインタビューしてみたいと考えている。ただ、係争中であることを理由に、当事者や弁護士はインタビューを受けられないとして拒否される可能性があるため、当事者やその弁護士への接触が難しいようであれば、この問題に詳しい研究者などに意見を聞いて、芸術作品に関してフェア・ユースが争われる場合の実務上の問題点などを洗い出し、それらの対応策などについて検討することとしたい。
さらに、現在調査中のアプロプリエーション・アートのほかにも、裁判などで注目されるほど明らかに争いとはなっていないが、フェア・ユースが問題とされている事例があるのではないかと考えているため、そうした事例があるかどうか、弁護士や研究者へのインタビューなどから聞き出すことができればと考えている。もしそのような情報が得られれば、具体的にどのような分野の著作物に関するものなのか、またどういったことで争いになっているのかなどを調査したい。
また、研究会やセミナーなどの聴講、最新の文献などからの情報収集も、日本国内ではもちろんのこと、アメリカでの現地調査においても精力的におこなっていきたい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度の研究費の使途としては、現地調査にかかる旅費が一番多く費用を要するものになると思われる。夏に1度、さらに補充調査として次年度中にもう1度アメリカに行き、弁護士や研究者などへのインタビューを行い、ロースクールや図書館、美術館などで文献調査と収集をおこないたい。また、日本でも研究会などの聴講のため出張するなどして情報収集をおこないたい。
また、さらに書籍や雑誌等の文献をはじめとする資料や、そして分析などのために必要なコンピューターのソフトや周辺機器などを購入する必要がある。
研究成果をまとめるためにあたってデータの整理などで人員が必要となってきた場合には、人件費としての出費が必要になってくることも考えられる。

  • Research Products

    (1 results)

All 2013

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] アプロプリエーション・アート(appropriation art)におけるフェア・ユース ―Cariou v. Prince, 784 F.Supp.2d 337 (S.D.N.Y. 2011) を中心に2013

    • Author(s)
      家本真実
    • Journal Title

      摂南法学

      Volume: 第46号 Pages: 29-92

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2014-07-24  

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