2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
橋本 祐子 九州産業大学, 基礎教育センター, 准教授 (80379495)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 復讐感情 / 刑罰 |
Research Abstract |
本研究では、「復讐」や「赦し」の感情に関する最新の哲学的・心理学的研究の進展を踏まえた上でそれらと正義概念との関係について精査を行い、さらに復讐感情を法へ反映させることが刑事政策における安直なポピュリズムを煽る危険性も考慮しつつ、法制度を通じ復讐感情を昇華させる可能性が存在しうるか否かについて検討を行うことを目的とする。 平成24年度には、第一に、本研究における考察の中心となる「復讐」と「赦し」の観念を明確にすることをめざして、哲学の領域において「復讐」の観念がどのように位置づけられてきたのかを検討するために英米圏の文献を渉猟し精読に努めた。また、心理学における復讐感情の位置づけやそのメカニズムの分析の理解にも努めた。 第二に、刑事法思想史、刑事政策理論に関する国内外の文献渉猟とその精読を行った。「復讐」と「赦し」は刑事法の分野における古典的な課題であることから、本研究を進めるにあたり、刑事法思想の歴史のなかでそれらがどのように位置づけられてきたのか、刑事政策理論においていかに議論されていたのかを踏まえておくことは必須の作業である。平成24年度は、刑罰と復讐感情の関係がどのように捉えられてきたのかという点に照準を定め、文献精読を行った。 第三に、本研究では英米圏、とりわけイギリスの刑法哲学、刑事政策理論を考察の対象としており、それらの最新の文献を網羅的に入手し研究の動向を把握しておくことは研究を遂行するにあたって不可欠である。そのためイギリスを訪問し、オックスフォード大学やロンドン大学経済政治学院(LSE)等において文献収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「復讐」に関する哲学、心理学における文献渉猟とその精査については、ほぼ目的を達成することはできたが、当初想定していたよりも時間を要するのものであったため、「赦し」に関しては「復讐」に関するほどには十分に文献を収集し精読することができなかった。 英米圏における刑事法思想史や刑事政策理論において、「復讐」と「赦し」がどのように位置づけられてきたのかという点に関しては、当初の目的の通りに文献収集を行い、その精読に努めることができた。ただし、当初は、被害者の「赦し」に焦点を当てる修復的司法について徹底的に検討を行うことを計画していたが、時間的制約からこの点については十分に目的を達成することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も、第一に、前年度に引き続き、刑事法思想史、刑事政策理論に関する国内外の文献の渉猟と精査に努め、刑事法領域における「復讐」と「赦し」に関する議論の体系的理解をめざす。第二に、「法と情念」と呼ばれる研究領域の分野の文献を収集して精査し、法と感情の問題を考察するためさまざまなアプローチについて批判的検討を行う。また、「法と文学」「法人類学」における「復讐」と「赦し」に関する研究についても文献を収集して精読に努める。中間的な研究成果を、国内の研究会・学会(法理学研究会、日本法哲学会)、国際学会(東アジア法哲学シンポジウム)において報告し、他の研究者からの意見や批判を仰ぐ。また、イギリスを訪問し、刑法哲学や刑事政策を専門とし、被害者の感情について考察を重ねている研究者と意見交換を行いたいと考えている。 平成26年度は最終年度であることから、「復讐感情」と「赦し」の法理論についての暫定的な成果について研究発表を行い批判を仰ぎ、それらをフィードバックして理論的彫琢を行い論文を執筆し発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)