2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730014
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
河北 洋介 名城大学, 法務研究科, 准教授 (30613286)
|
Keywords | カナダ憲法 / 司法積極主義 |
Research Abstract |
平成25年度は、選挙権に関するカナダ最高裁判決に現れた司法積極主義について検討した。近年、日本でも受刑者の選挙権や一票の較差の論点が司法で問題になっており、一票の較差については、最高裁は積極的な判決を下す傾向にある。そのような状況も踏まえた上で、カナダ最高裁のこれらの論点に関する判例を取扱い、カナダ的な司法積極主義の特徴を考察した。 カナダの選挙権については、直接的制約と間接的制約という分け方で問題となっており、前者で受刑者の選挙権の判例、後者で一票の較差の判例を問題にする。直接的制約とは、選挙権そのものが行使できないような制約を指し、間接的制約とは、選挙権そのものは行使できるが、選挙権を行使する選挙システムに制約がある場合を指す。そして、受刑者の選挙権の問題で、カナダ最高裁は2回の違憲判断を下し、現在では全ての受刑者に選挙権が認められている。この判決に現れた司法積極主義を「純粋な司法積極主義」と位置付けた。それに比して、一票の較差が問題となった訴訟では、カナダ最高裁は、一人一票の原則を採用せずに、「効果的な代表」という枠組みで合憲判断を下した。しかし、後に、政治参加権が問題となった訴訟において、「効果的な代表」という枠組みで、カナダ最高裁は違憲判断を下している。ここで現れたのは、マイノリティの権利保護という観点であり、多文化主義を採用するカナダならではの司法積極主義であり、それを「カナダ型司法積極主義」と位置付けた。そこには、性的指向関連判例でカナダ最高裁よって示された民主主義観が、選挙権の問題にも影響を与えているかもしれない。 平成26年度は、前記の研究をさらに進めて、司法積極主義のカナダ的特質の一部を明らかにしたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度から名城大学大学院法務研究科に赴任し、一年目であったために、講義・演習等の準備(レジュメの作成など)に時間をとられたために、十分な研究時間を確保することが難しかった。ただ、議会と裁判所の関係を見る上で重要だと考える選挙権の司法積極主義的側面で論文を公表できたことは、大きな進展であった。しかし、その後の研究に繋がる部分が十分にできていない。平成26年度は、前記のことを反省して、十分な研究時間の確保をして、研究をまとめ上げたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、カナダ憲法の研究者との話し合いなどの機会もあり、背景的知識を得ることができた。平成26年度は、愛知県という地理的に色々な場所に行くことが可能な地域であることを活かして、研究会などに参加して、さらに多くの知見を得られるようにしたいと考えている。また、学内紀要を利用して、論文等を公表したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初予定していたカナダでの資料収集を次年度に延期することによって生じた。 延期したカナダでの資料収集に必要な経費として平成26年度請求額と合わせて使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)