2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730017
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
田尾 亮介 立教大学, 法学部, 助教 (50581013)
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Keywords | 行政契約 / 行政指導 / インフォーマルな行政手法 / 協議 / 行政手続 |
Research Abstract |
本年度前期においては、前年度から継続して行っていたアメリカ法の研究に区切りをつけ、その研究成果を発表した(研究発表欄・雑誌論文①が該当する)。その内容は、アメリカにおける開発負担協定を素材に、交渉型行政手法にあらわれる法的問題を、「規制権限の取引問題」、「違憲の条件付けの法理」、「公衆参加・透明性」の観点から論じたものである。この研究の主たる関心は、行政と私人との間の”取引”によって、法律で定められた内容とは異なる内容形成が当事者の間で行われる可能性がある場合における、法的規律の可能性とその手法についてである。 本年度後期においては、上記論文において積み残した課題に対応する意味も含めて、二つの課題を設定しその研究に取り組んだ。一つは、日本法の現状分析である。日本法における宅地開発指導要綱の変遷と学説の展開を議論の軸に据えながら、同じ社会問題がドイツやアメリカにおいてどのような形で問題となり、それに対してどのような法的対応がなされ、それは法的な観点からはどのように評価されうるかについて、種々の資料を参照し、視点を相対化する作業を試みた。もう一つは、行政と私人との間で締結される契約・協定のみならず、私人の発意・私人間の合意が後に続く行政決定に前置される場合、または、それらが実質的に行政決定に代替される場合にまで研究対象を拡張し、日本法、アメリカ法、ドイツ法の具体的事例に即してその法的諸問題について考察を行った。上記二つの研究は、今後補充的調査を十分に行ったうえで、それぞれ研究論文として発表する予定である。 なお、本年度の研究実施期間中において、判例評釈の口頭発表を行っている(研究発表欄・学会発表①が該当する)。これは、住民訴訟係属中の議会による請求権放棄議決の適否に関する最高裁判決を対象にしたものであるが、発表内容をもとにした論文を近日中に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度前期においては、前年度から継続して行っていたアメリカ法の研究に区切りをつけ、その研究成果を発表した。また、本年度後期においては、前期に発表した論文の内容を補充するため、日本法の現状分析や、行政と私人との間で締結される契約・協定のみならず、私人の発意・私人間の合意が後に続く行政決定に前置される場合、または、それらが実質的に行政決定に代替される場合にまで研究対象を拡張し、その研究内容を幅と深さの両方の観点からみて前進させることができたと思われる。本年度後期に実施した研究については、積み残した課題がいくつかあるものの、今後補充的調査を行うことにより研究成果の発表につなげていくことが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、契約・協定締結に至る交渉・協議過程を対象にしたが、他方で、行政と私人との間の法律関係を一方的に変動させる行政処分・行政行為の前段階においても当事者の間で「協議」が行われることが少なくない。従来から存在していた国法レベルの規律に服する協議手続に加えて、最近では、各地の条例において協議手続を制度化する事例が多く見られる。そこでは、協定締結ではなく協議すること自体が制度化されていることが特徴的である。 用いられる場面によりそれぞれ異なる特徴を有するであろう行政作用法上の「協議」が、行政過程全体においてどのような機能・目的・位置づけを有し、いかなる手続的規律の要請に服するかについては、決定手続の設計とは異なる性質の問題がそこには存在すると考えられ、独自の考察を必要とする。 今後は、行政と私人の間の合意形成の重要な一手法でありながら、行政契約と行政指導の間で埋没してきた「協議」に焦点をあてた考察を行うとともに、都市法領域に限定することなく、環境法、社会保障法等の他の行政領域も視野に入れた類型的考察を行う。これにより、「合意による行政」の実態分析を進め、その法理論を発展させていくことが、本研究に残された課題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度中に、アメリカ法の分析を終え、その結果をもとに日本法への含意を制度と理論の両面から考察する予定であったが、類似の制度がドイツの一部州でも広範に活用されていることが判明し、研究計画を一部変更しドイツ法の分析を行うこととしたため、未使用額が発生した。 このため、ドイツ法の分析と本研究の総括的発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとする。
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