2012 Fiscal Year Research-status Report
行政不服審査の対象とならない行政活動に対する救済の「受皿」に関する研究
Project/Area Number |
24730027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
大橋 真由美 成城大学, 法学部, 准教授 (00365834)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 苦情処理 / 行政争訟 / 行政法 |
Research Abstract |
平成24年度は,研究初年度の研究として,わが国における行政苦情処理制度の現状を把握することを中心に作業を展開した。 具体的には,第一に,地方自治体が実施する苦情処理活動の位置づけ・全体像を明らかにするための作業を実施した。具体的には,まず,「苦情処理」概念と近接する概念として「ADR」概念が存在するが,これらの二つの概念の関係を理論的に整理した。そのうえで,地方自治体による苦情処理活動の実態を把握するために,消費者問題関係と公害問題関係という,苦情処理の代表領域を二つ取り上げ,これらについては担当者に対するヒアリング等を実施し,自治体による苦情処理活動の現状ならびにその課題について分析を行った。この一連の作業の成果は,大久保規子編集代表『自治体政策法務 第5巻』(出版社:ぎょうせい)において,原稿名「自治体におけるADRと苦情処理」として公表予定である。 第二に,国レベルの苦情処理活動に関しては,ちょうど平成24年度(厳密には平成23年度末)から,総務省行政評価局に設置された「行政相談高度化アドバイザー会議」の委員に就任したため,この行政相談高度化アドバイザー会議における活動を基盤に検討作業を展開した。具体的には,行政相談高度化アドバイザー会議関連の活動を通じて,総務省が実施する行政相談制度の全体像の把握に努めるとともに,行政相談制度をより効果的・効率的に機能させるための考察を行った。総務省の行政相談制度に関するこのような考察の成果についても,できるだけ早い段階で公表していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画においては,研究初年度(すなわち平成24年度)は,国・地方自治体両方のレベルにおいて展開されている行政苦情処理に関わる各種活動を体系的・理論的に整理し,全体的な視点からみた今後の課題点についても抽出し,行政上の苦情処理制度による救済機能を今後いかにしてより向上させていくことができるかという点に関する具体的施策について検討することとしていた。 この点,上記のとおり,昨年度は,国・地方自治体両方のレベルにおいて展開されている各種苦情処理活動について,ある程度の知見を蓄積することができ,また,地方自治体による苦情処理活動については,その検討成果を学術書において公表することを予定してもいる。そのような意味で,当初の研究計画において予定されていた研究作業をある程度のレベルでは達成することができたと評価できよう。 もっとも,研究計画においては,日本国内における制度の全体像把握と並び,外国の制度に関してもある程度調査を進めることとしていたが,このような作業に着手することはできなかった。その意味で,当初の予定を100%達成することができたとは言えないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,研究初年度の成果を踏まえて,もともと研究計画において初年度に実施する予定であった外国の各種苦情処理制度に関する検討に着手しつつ,もともと研究2年目の作業として予定されていた,行政関連紛争の解決における民間の紛争解決能力の活用に関する多面的な検討を進めていくこととしたい。具体的には,たとえば,公害紛争処理分野においていかなる民間による紛争解決能力の活用例があるか,また,行政相談制度における民間人の行政相談員の活用の現状についてなどについて検討を行い,作業成果については適宜公表していくこととしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使い途としては,昨年度に引き続き,本研究テーマに関連する内容の国内および国外の書籍購入が大きな部分を占めることになると思われる。一方,今年度は,苦情処理制度に関する実地調査として,国内での出張をできれば複数回実施したいと考えているため,その出張費も必要になるものと思われる。また,出張の際には,出張先で実施するヒアリングの相手方に対して謝金を支払うことになるため,そのような経費も必要になる予定である。
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Research Products
(3 results)