2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
榎 透 専修大学, 法学部, 准教授 (90346841)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 憲法 / 私人間効力 |
Research Abstract |
本研究の目的は、私人間効力論に関する多様な学説の分析を通して、私人間効力論という問題設定の意義・機能や、間接適用説などの各学説の持つ意味について、また諸学説の分岐点となっている重要論点について検討を行い、その上で私人間効力論における申請者の見解を示すことにある。平成24年度は、私人間効力論が具体的に機能する問題領域、私人間効力論において長い間通説とされてきた間接適用説の特徴を踏まえながら、私人間効力論という理論の意義と機能について検討した。具体的には、以下の2つのことを明らかにした。 (1)従来は私人間の人権問題を解決する立法の無い分野が多く存在したことから、私人間効力論はそのような分野の問題を解決するために論じられてきた。しかし、近年はそのような問題関心からではなく、法体系全体の中での憲法の位置づけを模索するという関心から論じられている。この変化によって、私人間効力論をめぐる議論は、具体的事例の適切な問題解決を目指すことから、理論的課題に焦点をあてることに大きな変貌を遂げた。 (2)間接適用説は、なぜ憲法上の人権規定を民法の一般条項に充填できるのかという点について、十分な説明を提示してこなかった。このため、間接適用説が直接適用説と差の無いものと理解したり、また、無適用説との差が無いとの理解も成立した。「間接」の根拠についても、国の基本権保護義務、憲法の最高法規性、裁判所の役割などの説明が登場した。もっとも、具体的事例の解決という点から言えば、これらの説明は必ずしも十分な差をもたらさないと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的からすれば、平成24年度はおおむね順調に進展したと評価できる。私人間効力論に関する多様な学説の分析を開始し、私人間効力論という問題設定の意義・機能や、間接適用説などの各学説の持つ意味についての検討が順調に進んだ。関連する判例の解説を執筆するなどして、具体的な事例も踏まえた検討が進んだと考えている。もっとも、私人間効力論における公私区分の位置に関する検討は、予備的考察に止まり、このため海外調査については平成25年度に先送りした。しかし、これについては、同年度に検討を予定している憲法と立憲主義の関係と重なるところが多々あることから、まとめて実施できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、今年度に行った、私人間効力論が想定している問題領域・問題意識や、間接適用説を巡る種々の理解を踏まえ、私人間効力論に関する学説の分岐点になっていると思われる重要論点について検討を行う。具体的には、(1)私人間効力論における公私区分の位置、および憲法と立憲主義の関係、(2)憲法が最高法規であることの意味、(3)憲法上の人権と自然権との関係、の3点について検討する。 平成26年度(最終年度)は、さらに私人間効力論に関する重要論点を考察する。その上で、私人間効力論の理論的・実際的有用性という点から、私人間効力論に関する申請者自身の見解をまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
公私区分や私的領域の多様性に関する第一人者との打合せ・調査研究のためのアメリカ旅費については、当初平成24年度に実施する予定であったが、研究を具体的に実施する中で平成25年度に実施した方がより効果的であると判断するに至った。このため、平成24年度で海外旅費として計上していた分については、平成25年度で使用することにした。 また、当初から平成25年度に配分される額については、予定通り、文献・資料購入費、複写費、印刷費、通信費などに使用する予定である。
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