2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730028
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
榎 透 専修大学, 法学部, 准教授 (90346841)
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Keywords | 人権規定の私人間効力 / 立憲主義 / 公私区分 / 憲法の最高法規性 |
Research Abstract |
平成25年度は、前年度に行った、私人間効力論が想定している問題領域・問題意識や、間接適用説を巡る種々の理解に関する考察結果を踏まえ、私人間効力論に関する学説の分岐点になっていると思われる重要論点2点について検討を行った。 (1)憲法と立憲主義、公私区分の関係について検討した。その際に、憲法と立憲主義を分離する見解は、従来の私人間効力論に関する議論を根底から覆す意味を持ちうることから、こうした見解を考察の出発点とした。そしてこの見解が、民主主義との関係、裁判所の役割、市民社会・私的自治との関係について、どのような理解をしているのかを検討し、通説的理解との距離を測った。なお、アメリカ憲法学の成果を本研究に生かし切れていないことから、平成26年度でこの点を補い、本研究の完成度を高めたい。 (2)憲法の最高法規性から私人間の問題に対して憲法の適用を考える学説に検討を加えることで、憲法が最高法規であることの意味を検討した。すなわち、憲法の最高法規性から私人間効力を考える説は、公私区分、民主主義との関係、裁判所の役割、市民社会・私的自治との関係について、どのように理解しているのかを考察した。その結果、この学説によれば、憲法規範の効力は憲法の最高法規という性格から公私の全領域(市民社会・私的自治)に及び、私法も含む法律(一般条項を含む)は憲法に反しないし、裁判所は具体的事案にそうした規範を適用する。もっとも、憲法の最高法規性からそもそも導出できる事柄は何であるのか、という点についても併せて考察する予定であったが、もう少し同説の意義と問題点を検証することで解答を見出したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は人権思想研究会で「私人間効力論の基礎理論に関する一考察」というテーマで報告するなど、研究成果を練り上げる作業に着手できている。平成26年度は、これまでの成果をも併せた形で活字論文化を行う予定であり、おおむね当初の研究の目的を達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では、国の保護義務論に対する評価、憲法上の人権規定を全法秩序の基本原則と理解することの意義と問題点、私人間効力論と統治機構・私的自治との関係を考察する予定である。また平成25年度は、憲法上の人権と自然権との関係をも検討する予定であったが予備的な考察に止まったため、平成26年度で行う諸検討の中で憲法上の人権と自然権との関係も扱う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、打合せ・資料収集を行う場所をハワイ大学へ変更したことから海外旅費が当初予定より少ない額になったことと、研究成果発表のためのHP作成を次年度に見送ったこと、の2点にある。 平成26年度は、研究計画に記した国内研究会での報告を平成25年度に行ったため国内旅費は不要である。この国内旅費分と今回生じた次年度使用額とを併せて、研究の進捗状況から必要になった打合せ・資料収集のための海外旅費にあてる。
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