2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730030
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
北村 貴 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (90609108)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 憲法政策 / 憲法制度 / 財政 / オーストリア |
Research Abstract |
2012年度は、①基礎的な文献サーヴェイ、②2008年12月31日までの財政規律に関する研究、③2009年1月1日から2012年12月31日までの財政規律に関する研究を行った。 (1)に関しては、本研究遂行の基礎となる部分であり、綿密な文献サーヴェイを行った。具体的には、Ohlinger, Theo: Verfassungsrecht, 8. Auflage, 2009及び Gerhard Steger und Alfred Pichler, Das neue Haushaltsrecht des Bundes, Wien: Verlag Österreich, 2008 を中心とした文献サーヴェイを行った。 (2)に関しては、まず、当該期間における憲法上の財政規律の規定に関して、その制定時の背景及び制定趣旨も含めて詳細な憲法解釈を行った。その上で、当該財政規律の規定が現実の財政運営に対してどのような影響を与えていたかについて考察した。 (3)に関しては、まず、2012年の下記にオーストリアにおける現地調査を行うことで入手した最新の資料(Lodl et at al: BHG 2013, 3. Auflage, 2012 など)を徹底的に読み込んだ。 これらの研究成果から、2008年の連邦憲法改正により、新たに憲法上根拠付けられた誕生した「連邦財政枠組法律(Bundesfinanzrahmengesetz)」が財政規律における重要な要素として位置づけられていることが判明した。特にヒアリングの結果からは、オーストリアの関係者はこの連邦財政枠組法律を非常に重視していることが読み取れた。しかし、その反面、中期的な財政規律という点において、連邦憲法による規律が不十分であるため、実際の財政問題に対する効果は必ずしも十分ではないということも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、オーストリアにおける憲法による財政規律について、「憲法学」及び「政治経済学」という二つの観点から分析を行うことで、我が国における財政問題への示唆を導きだすことである。研究実績の概要の欄で示した通り、計画以上に進んでいるわけではないが遅れているわけでもなく、順調に進展している。 研究計画を立てる段階で本研究を五つのフェーズに区分し、2012年度は当該フェーズのうち、前述の「①基礎的な文献サーヴェイ」、「②2008年12月31日までの財政規律に関する研究」、「③2009年1月1日から2012年12月31日までの財政規律に関する研究」を遂行する期間として設定し、それぞれの期間ごとに到達点を定めていた。 「基礎的な文献サーヴェイ」に関しては、上述の通り研究開始前からサーヴェイすべき資料を特定していたため、研究開始とともにスムーズに取り組むことができた。その結果、期間内に研究の基礎を構築することができた。「2008年12月31日までの財政規律に関する研究」「2009年1月1日から2012年12月31日までの財政規律に関する研究」に関しても、途中にオーストリア及び比較対象の国であるスイスでの実施調査を行うことによって、それぞれの期間における財政規律に関して、その特色と現実に対する実効性などの観点から、当初予定していた程度まで研究を遂行できた。 以上の点により、当初予定していた通りの目的は達成できていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、「2013年1月1日以降の財政規律に関する研究」及び「研究のまとめ」を行う機関として設定している。基本的には昨年と同様に研究を遂行していけば最終的に研究目的を達成できると考えている。 2013年発効の財政規律に関しては、まだまだ日本で入手できる活字化された資料が少ない。従って、2012年度の研究以上に現地でのヒアリング活動が重要となることが想定される。 さらに、研究計画策定時には想定してなかった幾つかの新たな要素が発生した。第一に、欧州安定メカニズムの発足に伴いオーストリアの連邦憲法が2012年7月に改正され、その改正部分には財政規律に関する規定も含まれていた点である。第二に、財政規律に関する新たな連邦憲法改正が進行中であることである。この改正は、ドイツ型の財政規律“Schuldenbremse“ (公債額対GDP比の上限を数値化し、歳出の上限を憲法上に規定)導入を目的とするものであり、この改正が成立すれば、2012年度の研究で判明した現状の財政規律の問題点に対するひとつの修正策となり得る。これら二点の要素に関しては、財政規律に対して重要な影響を与えるものであり、常に最新の状況を確認し適宜研究内容に反映させていく必要がある。これらの点に関しても、活字化された資料は少ないため、ヒアリング調査を通じて、最新の情報を入手する必要がある。 現時点でこれら二つの新たな要素が発生したが、そもそもオーストリアは頻繁に憲法改正を行っており、2013年度中にまた新たな要素が発生する可能性は決して低くない。これらの点に留意して、連邦議会や連邦政府への問い合わせを通じて常に最新の情報を入手しながら、2013年度の研究を遂行していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた2013年度の研究内容も、新たに発生した要素である上述の二点も、どちらも日本で入手できる活字化された資料は少ない。従って、ヒアリング調査や現地での資料収集などで成果を得ることができるかどうかが本研究完成のための重要なポイントとなる。 そこで、2013年度の研究費に関しては、2013年8月に予定しているヒアリング調査のための支出を主な用途として設定する予定である。
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