2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ合衆国における政府による裁判所への助言活動の実証研究
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24730031
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
北見 宏介 名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
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Keywords | 公法学 / 行政法学 / 政府 / 訟務長官 |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ合衆国におけるアミカスキュリエ、とりわけ、合衆国政府が提出する政府アミカス書面(Government Amicus brief)に焦点を当てるものである。平成25年度においては、「研究実施計画」に沿って、1)政府アミカス書面の提示局面に係る、行政過程と司法過程相互の検証作業に取りかかり、2)前年度に行った作業に関連する新たな文献のチェックと参照作業を行った。 このうち1)においては、行政過程において焦点となるのは、研究計画策定時の仮定の通り、司法省内の訟務長官事務室の作用であることを確認することができ、また、司法過程においては、最高裁判所裁判官からの訟務長官への政府アミカス書面の提出要求(CVSG:Calls for the Views of Solicitor General)の決定場面と、CVSGがなされていない場面での裁判所調査官(Law Clerk)による政府アミカスの受け止めであることが明らかになった。 また2)に関しては、近時におけるアミカス書面に係る議論と、そこにおける参照状況から、これまでの作業の補完を行うとともに、かの国において、アミカスとしての合衆国議会の位置づけに関する一定の議論の蓄積があることを確認することができた。加えて、最高裁判所における政府アミカス書面の位置づけに関しては、下級裁判所の判断-訟務長官の対応-最高裁判所の機能という三者間の関係という把握図式を認識するに至った(この点については、加藤範久氏の議論からも大きな示唆を受けた)。 上記の研究内容については、当初の予定通り、平成25年度の時点では公表を行ってはいないが、次年度における公表に向けて、引き続き研究作業を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」で示した作業を行ったほか、平成25年度には、わが国において、特に知的財産法の領域で、アミカスキュリエへの着目が著しい高まりを見せたため、後半期には、わが国における当該テーマに近接する議論動向の検証作業にも着手した。すなわち、すでに本研究の計画策定とほぼ同時期に、日本弁理士会で「アミカスブリーフ委員会」が設置されており、日本版アミカスキュリエの可能性の検討がなされていたが、平成25年度には、知的財産高等裁判所大合議事件(平成25年(ネ)第10043号)についての意見募集という形で、論者によっては「事実上のアミカスキュリエ」とも評されるような訴訟運用がなされるにも至った。知的財産法領域ということで、本研究と直結する議論ではないかもしれないが、すでにアメリカ合衆国における政府アミカス書面にも言及する業績も存在し、示唆を受けている。 他方で、前年度において研究の射程外であると認識しつつも若干の調査作業に取りかかった州レベルの政府アミカス書面に関する検討は、平成25年度には、ほとんど具体的な作業を行うには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の、「現在までの達成度」に示したとおり、わが国におけるアミカスキュリエに関する議論は、かなりの進展を見せ、また実務上の動きにも注目をすべきものがある。 本研究は、アメリカ合衆国における司法過程と行政過程の相互作用に着目し、政府アミカス書面が果たしている機能(またこれに係る司法省・訟務長官の役割像)に検討を加えようとするものである。このため、上記のわが国における現下の議論の進展に関しては、本研究の射程からは外れる事項が多くを占めることになるであろうが、これらとの接続面についても可能な限り意識した上で、わが国の議論状況も注視しつつ、また、公法学や司法政治学の研究に過度に限定を加えることなく、引き続いての検討作業を行う所存である。 また、平成25年度に得られた知見のうち、「研究実績の概要」の2)については、本研究計画との関連では、引き続いての発展的な課題ということになるが、わが国とアメリカ合衆国の統治構造の差異(とりわけ、いわゆる「権力分立の硬さ」)を念頭に置いた場合、わが国の法務大臣意見書と合衆国訟務長官をはじめとした執行府からのアミカス書面の比較においては必ずしも無関係というわけではないため、この点についても可能な限り意識を向けた研究を進展させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、次年度において情報端末の環境、すなわち調査・執筆に係るパソコン端末をはじめとする備品類の更新を余儀なくされる状況が明らかになった。このため、基金による次年度持ち越しの利点の恩恵を得て、研究に生じる支障を極小に留めるため、年度をまたぐ形で環境の整備を図ることとした。 平成26年度の早い時点で、環境整備を完了させ、若干の変容はあるものの、当初の計画から大きくははずれることなく研究費を使用することになる予定である。
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