2012 Fiscal Year Research-status Report
国際義務の迂回への法的対応の研究:WTO協定中の迂回防止規定の機能に着目して
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24730033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
小林 友彦 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (20378508)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | WTO協定 / 信義則 / 権利濫用 / 租税回避 / 条約の国内適用 / アンチダンピング / 輸出補助金 / 農業協定 |
Research Abstract |
国際義務が拡大・深化し、紛争処理手続や履行監視メカニズムが強化されるにつれて、当該義務の不履行や不遵守は減少しうる一方で、当該義務を「迂回」しようとする誘引が強まりうることに、本研究では注目した。 義務の回避ないし迂回については、国内法学では各分野に蓄積があるものの、国際法学においては先行研究が少ない。そのため、「迂回」の定義も研究対象となる。さしあたり、「人為的な操作によって、ある義務の適用を免れる(又は当該義務違反の例外的許容事由に該当させる)ことを企図し、それによって当該義務の機能を縮減させる行為」を指すこととして、分析作業を進める。国際義務の違反ではなく、それを偽装する行為とも異なる一方で、当該義務の機能を損なうという効果を有することから、法制度の実効性にかかわる問題を提起していると捉えるのである。 初年度は、前年度までの予備研究をふまえて、引き続きWTO協定中で「迂回」の防止に明示的に取り組む規定を有する農業協定、政府調達協定、繊維協定に加え、改正交渉の中で「迂回」防止に取り組む規定を挿入するか否かについて議論の蓄積があるアンチダンピング協定に焦点を当てて法的論点の検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連資料の収集・分類、先行研究の整理・レビュー、法的論点の分析・検討において、順調に研究を進めることができた。 研究成果としても、WTO農業協定における迂回防止規定について分析した『グローバリズムと地域経済』所収論文を公表し(後掲13.〔図書〕欄参照)、また、日本および中国におけるWTOアンチダンピング協定の実施態様を分析する中で国家の「迂回」への誘引についても検討した『新世代法政策学研究』誌掲載論文等を公表することができ(後掲13.〔雑誌論文〕欄参照)た。 また、米国法社会学会の研究大会における"Catch Me If You Can: Revisiting the Role of Anti-Circumvention Provisions under International Law"と題した学会発表から(後掲13.〔学会発表〕欄参照)、今後分析を展開するための有益な示唆を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に行った研究をふまえて、「迂回」行為の判断基準を明確化することおよび「迂回防止」における実効性確保と過剰規律禁止の間のバランスをとることについて、理論的枠組みの構築を試みることに重点を置く。その際、前年度よりもいっそう、他の国際法分野との関連性・理論的な整合性に留意しつつ研究を遂行していく。 前年度繰り越した4,568円は、資料収集のための費用に充当する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
配分額に合わせて支出計画を変更し、設備備品費(関連書籍や公式文書の収集)に60万円程度、国内旅費・外国旅費に40万円程度、謝金として6万円程度、消耗品費(論文別刷代や記憶媒体代金)に4万円程度を支弁する予定である。おおむね、当初計画から各費目について按分して使用する予定である。
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Research Products
(5 results)